古城大国ドイツの美しい城10選

歴史ある古城が沢山あるドイツ。ドイツのお城と言えばのシュヴァインシュタイン城や最近日本でじわじわ有名になりつつあるホーエンツォレルン城を想像される方も多いと思いますが、お城はそれだけではありません。

まだまだ日本では無名の美しい城をぜひ皆さんにも知ってもらいたく、今回は私がこれまで訪れた中から「これは美しい!」と唸ったドイツの美城を紹介します。

「城」はドイツ語で「Burg」?それとも「Schloss」?

日本語では簡単に「城」と言えてしまいますが、ドイツ語では「城」を表す言葉として「ブルク(Burg)」と「シュロス(Schloss)」があります。

「ブルク」と「シュロス」の違いを分かりやすく説明するなら、ブルクは防衛用に建てられたものであるのに対し、シュロスは主に居住用として建てられたという事です。

実際に建物を見ても、ブルクと名の付くものはがっちりしたと強そうな見た目で、立っている場所も丘の上や谷の奥深くなど敵が攻めにくい様な場所が多いです。防衛が第一の目的なので、内部の装飾などもかなり質素。日本語では「城砦」と言うのがしっくりきます。

それに比べてシュロスは外観も内部も華やか。ブルクが縦に伸びているのに対し、シュロスは割と平面的な構造になっているのも1つの特徴です。とはいえ全てがこの基準に当てはまる訳ではなく、ノイシュヴァンシュタイン城みたいな例外も多いです。さきほど主に居住用と書きましたが、それに加えて軍事的役割を果たした物や政治の舞台になったところもあります。

個人的には、いかにもお姫様が住んでいそうな華やかな外観の城よりは、強そうな見た目の城塞の方が好きです。

また余談ですが「宮殿」はレジデンツ(Residenz)、「廃墟」や「城跡」はルイーネ(Ruine)と言います。覚えておくと役に立つかも。

イチ押しの美しい城はこれだ!

10ヶ所だけを選ぶのにかなり悩みました。5つくらいはすぐに決まったものの、残り半分がどうしても決まらない。

最終的には外観の美しさに加え、「もっと知名度が上がってほしい城」や「観光スポットとして楽しめるか」といった条件も考慮しながら、なるべくドイツ全体にばらけるように選ぶようにしました。

ちなみにノイシュヴァンシュタインは有名すぎてここで紹介する必要もないと思うので、リストからは除外してあります。

(地図素材: Map of Germanyby FreeVectorMaps.com

エルツ城

トップバッターは「ドイツ3大美城」の1つでもあるエルツ城(Burg Eltz)。ドイツ西部、モーゼル川の支流が流れるエルツ渓谷にひっとりと佇んでいるお城です。美しいのみならず、12世紀に建設されて以来一度も陥落したことがない、まさに「難攻不落の城」でもあります。

高さ70mの岩の上に500年もの歳月をかけて上へ上へと増設されたエルツ城。壁をよく見ると所々色が異なりますが、これはそれぞれの個所で建設された年代が異なるという証。

城内はガイドツアーで見学可(写真撮影不可)。武器を保管してある部屋や「騎士の間」、キッチンや寝室などを見学しながら、中世の暮らしの一部を垣間見ることができます。

「難攻不落」というくらいですから、公共交通機関を使ってのアクセスもかなり悪いです。車で行くのが一番ですが、そうでなければ電車とバスを乗り継いで行くか、またはオプショナルツアーを利用するのも1つの手でしょう。

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ライヒスブルク

ライヒスブルク(Reichsburg)はエルツ城から車で30分ほど走ったコッヘム(Cochem)という町にあります。12世紀頃に建てられた城は中世に税関として使われ、17世紀のプファルツ継承戦争で破壊された後しばらくしてから19世紀に再建されました。

城は小高い丘の上に立っていますが、この様な堂々とした「上から見下ろす」ような姿は私が特に好きなスタイルです。下に広がるのはワイン畑。コッヘムをはじめモーゼル川流域はワイン生産が盛んなので、行かれる方はぜひワインをお土産にどうぞ。

城内部はガイドツアーのみで見学可。内部は先ほど紹介したエルツ城と似たり寄ったりなので、両方行く場合はどちらか片方だけツアーに参加すれば十分です。

そしてライヒスブルクを最も美しい角度から見れる場所が、城の北方向にある山の山頂。ここに登らなければわざわざコッヘムへ来た意味が無くなってしまいますから、必ず上りましょう。リフト(Cochemer Sesselbahn) で楽々上れます。

ヴェルニゲローデ城

その美しさや風貌から「第2のノイシュヴァンシュタイン城」や「ラプンツェルが過ごした城」などと言われているヴェルニゲローデ城(Schloss Wernigerode)。ドイツ東部ヴェルニゲローデの、これまた小高い山の上にあるお城です。

ドイツ皇帝がハルツ地方へ猟をしに来た際の居城として、12世紀頃に建設されたヴェルニゲローデ城。建設後はほぼ1世紀ごとに増改築を繰り返し、現在ではバロック様式とネオゴシック様式が混在するほか、一部の窓枠のみでゴシック様式に改装した際の名残りが見られます。

城内のハイライトである「祝祭の間」では、豪華なシャンデリアや壁の絵画が荘厳な雰囲気をかもし出しています。他にもプロイセン王ヴィルヘルム1世をはじめとする高貴なゲストを迎えた「王の間」や、東洋から送られた陶器が展示してある部屋など、それぞれ趣の異なる部屋が続きます。

ルードヴィヒスブルク城

シュトゥットガルトの郊外にあるルートヴィヒスブルク城(Residenzschloss Ludwigsburg)ドイツ最大のバロック宮殿。18世紀に建設され、ヴュルテンベルク公エベルハルト・ルートヴィヒの居城として、またその後はヴュルテンベルク王フリードリヒ1世の夏の離宮として使用されました。

壮麗な外観はもちろん、内部もかなり凝った造りになっていて宮殿の優雅な暮らしが手に取るように分かります。この地域はシュヴァーベン地方と呼ばれていますが、ルードヴィヒスブルクはその美しさから「シュヴァーベンのヴェルサイユ」とも呼ばれているのです。

庭園では季節ごとに様々なイベントが開催されます。私が訪れた時はちょうどカボチャ祭りの時期で、あちこちにカボチャが飾られていました。

ゾーンエック城

ライン川クルーズをしていると見えてくるゾーンエック城(Burg Sooneck)。2kmくらい離れた場所にあるライヒェンシュタイン城の守護城として11世紀に建設後、13世紀には盗賊の住み家になるなどして破壊と再建を繰り返してきた波乱万丈の城です。

城自体はいかにも「守りの城」といった強そうな外観ですが、ここから見えるライン川がまた美しいのです。すぐ近くにある採掘場が視界に入ってしまう事が唯一残念な点。

内部ではかつての居住空間が再現されており、壁にはかつて日本人から贈られたという日本刀まで飾られていました。誰が贈ったのかは不明であるものの、思わぬところに日本との接点があって驚きです。

ラインシュタイン城

数々の古城が立つライン川流域でも特に美しいことから「ラインの宝石」と称えられているラインシュタイン城(Burg Rheinstein)。荒廃が進んでいた城を19世紀初頭にプロイセン王子フリードリヒが買い取り、現在の様なネオゴシック様式に改修しました。

ライン川を見渡すローズガーデンや重厚な雰囲気に包まれた「騎士の間」など、ラインシュタイン城は見どころも満載。カフェのテラスでライン川を見下ろしながらの食事も、気持ちがよくてかなりおすすめです。

中世の面影を現代へ伝える美しい城では結婚式もできます。私達が結婚式をしたのもこのお城です。

モーリツブルク城

ドレスデン郊外にあるモーリツブルク城(Schloss Moritzburg)。こんなこと言っては失礼ですが、その色と形からどことなくプリンを想像させる城でもあります。

狩りをする際の居城としてザクセン公が15世紀に建てたモーリツブルク。当時の王族や貴族は狩りが趣味のひとつで、「狩りの為に建てられた」という城は珍しい物ではありません。そしてそのような目的として使用された、または狩りを趣味にする城主が住んでいたという過去のある城内部には、狩りで捕らえた鹿などの角やはく製が展示されている事が多いです。

例を挙げるならこんな感じ。先ほど紹介したラインシュタイン城の隣にあるライヒェンシュタイン城の内部です。モーリツブルク城の内部には入っていないので写真はありませんが、HPには同じように角が飾ってある部屋の写真が掲載されています。どこも角を飾るのがインテリアだったんですね。

湖の水面に移るお城の姿もまた美しいです。

ヴァルトブルク城

ドイツ史においても極めて重要な役割を果たしたヴァルトブルク城(Wartburg)。私が初めてドイツ訪問をした目的がまさにこの城だったこともあり、今だ思い入れの強い場所です。決して華やかな外観ではないものの、まるで周囲に睨みをきかせるような強さと美しさが感じられる城です。

昨年(2017年)は宗教改革から500年という記念の年という事で、ヴァルトブルクもかなり注目を浴びた場所のひとつ。教会に対して「95か条の論題」を突きつけたマルティン・ルターはそれが故に破門、国外追放の処分を受けるものの、この城にかくまわれてひっそりと聖書のドイツ語訳を行いました。

「ルターが聖書を翻訳した城」というイメージが前面に出ていますが、12世紀には吟遊詩人が歌合戦を繰り広げたり、13世紀にはハンガリーからエリザベート妃がわずか4歳という年齢で嫁いできたりと、特に中世関連のテーマは様々。ワーグナーのオペラ「ターンホイザー」もこの歌合戦が題材になっています。

私が訪れたのは2008年。10年目の節目にぜひ再訪したいものです。

シュヴェリーン城

北ドイツにあるシュヴェリーン城(Schweriner Schloss)は、2つの湖に挟まれた小島の上に立っている姿が優雅でありメルヘンチック。973年にスラブ人が要塞を築いた事からこの城の歴史が始まり、その後数々の増改築によって現在のような華麗な姿へと変貌していきました。

650部屋もある城の一部は博物館として公開され、王の間や図書館、マイセンをはじめとする陶磁器のコレクションが展示されています。

城の背後に広がる庭園やそこからの眺めも素晴らしいシュヴェリーン城。「北のノイシュヴァンシュタイン」と呼ばれるだけあり、おとぎの国に迷い込んだかのような世界観が広がっています。

ジグマリンゲン城

最後にご紹介するのはドナウ川のほとりに堂々と建つジグマリンゲン城(Schloss Sigmaringen)。12世紀に建設され、現在のようなルネサンス式の城に生まれ変わったのは16世紀のことです。

この城を所有するのはホーエンツォレルン・ジグマリン家。ホーエンツォレルン城を所有するホーエンツォレルン家の分家にあたる一族になります。

城内部はガイドツアーで見学可(内部の写真撮影は禁止)。城の入り口にはホーエンツォレルン家の紋章が飾られています。

「祖先のホール」や「食事の間」、応接に使用された部屋などはどれも素晴らしい調度品で飾られ、「こんな場所に暮らす人もいるのか」と住む世界の違いにしばし唖然としてしまうかも。しかもそれらの部屋は現在でも特別な行事などで使用されるのだそうです。

豪華な装飾の1つであるヴェネチアンガラスのシャンデリアは、割れるのを防ぐために溶かしたバターで満たした容器のなかにシャンデリアを入れ、バターが固まったところでヴェネチアから運んできたのだというエピソードもありました。運んだ後にバターをふき取るのがまた面倒そうですが、割れてしまうのに比べれば何ともなかったのでしょうね。

様々な銃や鎧が集められた武器庫もあり、こちらはオーディオガイドを聞きながら見学します。西洋の武器のみならず日本の甲冑も展示されています。

紹介したのはほんの一部

今回ご紹介した城はドイツに数多くある美しい城のほんの一部。そして「私が実際に訪れた城」のみから選んだものなので、ドイツの全ての城を網羅している訳ではありません

もともと城塞みたいなお城は大好きで、今年も機会を見ていくつか訪れる予定。毎年、年末ごろにまた「今年訪れた城」のようなまとめをお伝えできればと思っています。

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