木々の新緑が美しく、清々しい気持ちになれるドイツの5月。
4月からは20度を超える日も珍しくなく、暖かくて過ごしやすい日が続きます。
そんなドイツの5月に突然やってくるのが「寒の戻り」。ドイツ語では「氷の聖人(Eisheilige)」と呼ばれていて、5月中旬になると天気予報でも「氷の聖人が来るから気をつけましょう」と言っているのを見かけます。
時には霜が降りることもあり、家庭菜園などしている人は特に注意したいところです。
今回は、そんなドイツでの「寒の戻り」がテーマ。
急に気温が下がる仕組みや、「氷の聖人」と呼ばれている5人の聖人について解説します。
5月に急に気温が下がる仕組み
ドイツや周辺諸国での寒の戻りは以下の様な仕組みで発生します。
- 気温が高い大陸と冷たい海との温度差により低気圧が発生
- 気団が移動し、大陸のあたたかい空気が北上
- これにより、北極から冷気が流れ込む
毎年5月11日~15日に発生するといわれている「寒の戻り(氷の聖人)」。
ちょうど今日(5月12日)がその2日目にあたりますが、朝の気温は1度しかなく、日中も12度程度と結構肌寒いです。
10日までは20度以上だった気温が11日になった途端にぐっと下がり、まさに「氷の聖人がやってきた」という感じ。自然のことなのに、ここまで日程が正確なのにはビックリです。
5人の「氷の聖人」
キリスト教圏では特定の日にそれぞれ聖人を割り当て、彼らを讃える日になっている事が多々あります。
日付ごとにどの聖人が該当するかを示した「聖人暦」というものがあり、「氷の聖人」には割り当てられているのは以下の5人。
- 5月11日:マメルトゥス(Mamertus、ヴィエンヌ司教)
- 5月12日:パンクラティウス(Pankratius、4世紀の少年殉教者)
- 5月13日:ゼルヴァティウス(Servatius、トレンヘン司教)
- 5月14日:ボニファティウス(Bonifatius、8世紀の宣教師・殉職者)
- 5月15日:ソフィア(Sophia、4世紀の殉職者)
北ドイツでは「マメルトゥス」から始まりますが、南ドイツやスイス、オーストリアでは「パンクラティウス」が氷の聖人の1人目。
また「パンクラティウス」、「ゼルヴァティウス」、「ボニファティウス」の3人を合わせて「氷の王たち(Eiskönige)」や「氷の男たち(Eismänner)」と呼ぶこともあります。
聖人ソフィアは、ドイツ語で「ゾフィー」。ドイツ語圏では15日が「冷たいゾフィー(kalte Sophie)」となり、同時に「氷の聖人」の最終日です。
「冷たいゾフィーが全てをだめにする(Die kalte Sophie macht alles hie)」という古いことわざもあり、その意味は「外での種まきはこのゾフィーが過ぎてから」。芽吹いたばかりの作物が霜で枯れてしまうのを防ぐため、昔の農家には15日以降に種をまく習慣があったのだそうです。
家庭菜園をしている人は霜に注意
氷の聖人がやってくると朝方に霜が降りる事もあるので、家庭菜園をしている人は要注意。
せっかく育ってきた野菜や寒さに弱い花が傷んでしまわないよう、霜よけをしたり家の中に取り込むなど対策が必要です。
我が家では毎日天気予報をチェックしているので、霜が降りそうな時は植木鉢やプランターを家の中へ。
地植えの野菜には下の様な不織布を被せて対応しています。
一気に気温が下がって外の野菜は得に心配ですが、予報では15日を過ぎればまた暖かくなるとのこと。少しの間の辛抱です。
5月にやってくる「氷の聖人」:まとめ
それまで暖かかった春の陽気から一気に気温が下がる「寒の戻り」。
ドイツ語圏では「氷の聖人」と呼ばれ、霜が降りることもあるので野菜や花を育てている人は特に注意しましょう。
あとは気温の変化で体調を崩さないよう、寒さ対策も忘れずに。
氷の聖人が去ってしまえば、もう気温が氷点下になる心配はなく夏を待つのみです。