2019年はベルリンの壁崩壊から30周年。そんな節目の年にベルリンで訪れたい、ベルリンの壁そして東ドイツ関連のスポットを紹介します。
ベルリンの壁崩壊については授業で学んだくらいという私達の世代にとっては、当時の東ドイツの人々を取り巻いていた環境が分かる興味深い場所ばかり。悲しい歴史に直面しなければならないスポットなど楽しい場所ばかりではありませんが、ここで起こったことが忘れ去られないためにも多くの人に訪れてほしいです。
Contents
東西ドイツを分断したベルリンの壁
ベルリンの壁は1961年8月13日に東ドイツによって築かれ、町を分断しただけでなく多くの家族や友人らも東西に引き離しました。東ドイツからは何人もがこの壁を超えて西ドイツへ逃げようと試み、最近の調査では壁を超えようとするなどして少なくも136人が亡くなったことが分かっています。
そんなベルリンの壁が崩壊へと向かう重要な一歩となったのが、1989年にライプチヒで始まったデモ。当時東ドイツ内にあったライプチヒでは9月から民主化を求める「月曜デモ」がはじまり、11月6日に行われたデモでは参加者が約50万人にまで拡大したのです。
政情不安や市民の反発が高まるなか、11月9日には政府が「東ドイツ国民は、これより全ての国境からの出国が認められる」と発表。報道をききつけた東西ベルリンの人々が壁周辺に殺到し、ついに国境が解放されてベルリンの壁はその意味を失ったのでした。
ベルリンで訪れたい東ドイツ、ベルリンの壁関連スポット
ブランデンブルグ門
ベルリンの観光名所のひとつでもあるブランデンブルグ門。東西ドイツ時代にはこの門のすぐ手前にベルリンの壁が築かれ、それまでのように門の下をくぐって自由に行き来することはできなくなっていました。
ベルリンの壁崩壊後は再び通り抜けられるようになり、現在ではドイツ再統一のシンボルとしてドイツユーロ貨幣(10、20、50セント)にもその姿が刻まれています。門の西側では道路上をよく見ると、壁が立っていたときの名残りが残されています。
ブランデンブルグ門(Brandenburger Tor)
住所:
アクセス:S、Uバーン、バス「Brandenburger Tor」すぐ
イースト・サイド・ギャラリー
ベルリンの壁は今でもその一部が町の何ヵ所かに残されていますが、中でも見ごたえのあるのがイースト・サイド・ギャラリー。シュプレー川沿い約1.3kmにわたって続く壁には、ドイツ国内外のアーティストによるアート作品が描かれています。
描かれている作品のテーマは自由や平和、東ドイツ国民の絶望や社会主義へのいらだちなど。特に有名なのは、ソ連のブレジネフ書記長と当時の東ドイツ首相ホーネッカーが口づけしている様子を描いた作品でしょう。ソ連と東ドイツの友好関係を象徴しているかのようなこの絵からは、「自由(社会主義からの脱却)への道のりはまだまだ遠いもの」と当時の東ドイツの人々が抱いていた絶望感が伝わってきます。
かつては東西を分断し冷酷にも多くの人々の命を奪った壁ですが、現在はベルリン屈指の人気スポットとして多くの観光客が訪れます。以前は落書きがひどかったと他の方のブログで見かけましたが、最近整備されたのか目立つ落書きも部分的にしかありませんでした。
明るいポップ調のアートや暗くおどろおどろしいものなど、作品の雰囲気は様々。日本をモチーフにした作品もありました。
イースト・サイド・ギャラリー
最寄駅:「Warschauer Straße」または「Ostbahnhof」
ベルナウアー通りに残されたベルリンの壁
ベルリンの壁についてさらに知りたいのであれば、Sバーンの「ノルトバーンホフ」駅から北東に伸びるベルナウアー通りへ足を運んでみましょう。ここは「ベルリンの壁 記憶の場所」として約200m続く壁、ビジターセンターや資料館などが集まるエリア。ビジターセンター、資料館にはベルリンの壁建設から崩壊に至る歴史が映像や資料で展示されていて、無料で見学することができます。
資料館の屋上から見えるのは、当時の様子そのままに再現された壁の緩衝地帯。壁の東ドイツ側には数十メートルの緩衝地帯が設けられ、東ドイツ市民が西側へ脱走しないよう東ドイツ兵が監視をしていました。こうして見てみると、当時の東ドイツ市民にとっては壁に近づくことさえ困難だったことがよく分かりますね。
壁を越えて西側へ逃げようとした市民は兵士により射殺され、緩衝地帯跡の公園には犠牲者の写真を並べた慰霊碑も置かれています。
ビジターセンター(Besucherzentrum der Gedenkstätte Berliner Mauer)
住所:
開館時間:10:00~18:00
休館:月曜
アクセス:Sバーン「Nordbahnhof」下車すぐ
資料館(Dokumentationszentrum Berliner Mauer)
住所:
開館時間:10:00~18:00
休業:月曜
アクセス:トラム「Gedenkstätte Berliner Mauer」から徒歩1分、または「Nordbahnhof」から徒歩10分弱
チェックポイント・チャーリーと壁博物館
チェックポイント・チャーリーはベルリン市内に14ヵ所あった国境検問所のひとつで、当時は西側同盟諸国の軍関係者や外国人の通行のために使用されていました。土産物屋やファストフード店がならぶフリードリヒ通りの真ん中に小さな検問小屋が立ち、西側からみるとソ連、東側から見るとアメリカ軍の国境警備兵の写真が掲げられています。
同じ場所にある壁博物館はベルリンの壁が建設された翌年の1962年、壁建設への抗議として設立されたもの。東側から脱出するために人々が使った様々な手段のほか、失敗して射殺された市民のストーリー、秘密警察シュタージやそれに対する反抗勢力に関する展示がされています。
チェックポイント・チャーリーの北にある交差点を渡ったあたりでは、東西ドイツ時代に関する無料の野外展示がされています。博物館に訪れる時間がないという方はこちらに来てもいいかもしれません。
チェックポイント・チャーリー
住所:
アクセス:Uバーン「Kochstraße」から徒歩1分
涙の別れの場所「トレーネンパラスト」
ベルリンの壁があった当時、国境駅として機能していたフリードリヒシュトラーセ駅の前には「トレーネンパラスト(涙の宮殿)」と呼ばれる出国検問所がありました。ここは旅行の自由が許されない東側の人々が、西側から訪問してきた家族や親戚、友人と涙ながらに再び引き裂かれた場所です。
検問所だった建物は当時の様子がわかる記念館になっています。壁が建設される前後に東西で放送されたニュース、西側へ亡命した人々のインタビューや資料からは、当時の緊迫した空気と人々の不安が伝わってきます。
建物の奥にあるは出国の検問室。中に入り決して居心地がいいとはいえない狭い室内でカウンターの前に立ってみると、ここから西ベルリンへ向かった人々が感じていた緊張感を疑似体験しているかのようです。
トレーネンパラスト(Tränenpalast) HP
住所:Reichstagufer 17, 10117 Berlin
開館時間:9:00~19:00(火~金)、10:00~18:00(金、土、日)
休館日:月曜
アクセス:Sバーン「フリードリヒシュトラーセ」下車すぐ
東ドイツの人々の暮らしが分かる「DDR博物館」
東ドイツの人々がどんな生活をしていたのか、体験しながら知ることのできるのがDDR博物館。DDRというのは、Deutsche Demokratische Republik(ドイツ民主共和国)を略した言い方です。
管内に展示されているのは当時の様子が分かる写真のほか、人々が実際に手にしていた生活用品や雑誌、コスメなど。東西ドイツ時代を知る人にとっては当時を懐かしむ場所、知らない世代にとっては「未知なる国」DDRを身近に感じることのできる場所です。
一般家庭のキッチンやリビング、保育園の再現空間では、戸棚や引き出しを開けたり、中に入っている物を手に取ってみることも可能。レトロな生活用品があちこちに置かれ、当時を知らない私でもノスタルジックな気持ちにさせられました。
東ドイツの政治に関する展示もされ、書記長専用の執務室や「シュタージ」と呼ばれていた秘密警察の盗聴室などが再現されています。シュタージについてもっと詳しく知りたい方は、この後に紹介するシュタージ博物館に足を運んでみましょう。
DDR博物館(DDR Museum) HP
住所:Karl-Liebknecht-Str. 1, 10178 Berlin
開館時間:10:00~20:00(土曜 ~22:00)
アクセス:バス、トラム「Spandauer Straße/Marienkirche」から徒歩3分、または「Hackenscher Markt」から徒歩10分
博物館を訪れて東ドイツに興味を持ったら、「グッバイ・レーニン!」という映画もぜひ観てください。壁崩壊からの激動の時代に生きる家族の愛が描かれ、ドイツ映画のなかで私がいちばん好きな作品です。笑いの部分が多いですが最後はちょっと泣けます。
シュタージ博物館
DDR博物館で感じられた「古き良きドイツ」。しかしそんな彼らの生活の裏側では、国家ぐるみの監視活動が行われいました。東西ドイツの人々を厳しい監視下におき、反体制派を弾圧すべく一般市民も巻き込んで監視体制を作り上げていた東ドイツの秘密警察(通称「シュタージ」)。本部だった建物が博物館になっていて、組織の成立や活動内容、実際に使用されていた盗聴器や隠しカメラなどが展示されています。
隠しカメラ、盗聴器は服のボタンやベルトのみならず、切り株や道路上の石にまで取り付けられていたのですね。ほかにも容疑者が取り調べ中に座っていた椅子の布を「体臭サンプル」として採取したり、郵送途中の手紙の内容を特殊な機械でこっそり読んだりと、「こんなことまでしていたのか」と監視にかける彼らの執念には驚くばかりです。
このほかシュタージの大臣であったエーリッヒ・ミールケの執務室やプライベート用の部屋、秘書の部屋も再現されています。シュタージの活動からも分かるように展示内容は重いですが、東ドイツをより深く知るための手がかりとなる博物館です。
シュタージ博物館(Stasimuseum) HP
住所:
開館時間:10:00~18:00(月~金)、11:00~18:00(金、土、日)
アクセス:Uバーン、バス「Magdalenenstraße」より徒歩6分
シュタージがどんな風に監視を行っていたか映像で知りたいという方には、映画「善き人のためのソナタ」もおすすめ。暗くて息の詰まるような映画ですが、当時の監視社会の一端を垣間見ることができます。博物館の訪問前に観て予習してみるのも良いでしょう。
おわりに
ベルリンの壁崩壊から30年という節目の年に訪れてみたい東ドイツ・ベルリンの壁関連のスポットを7つ紹介しました。悲しい過去を嫌でも突きつけられる場所もあれば、どこか懐かしい気持ちにさせられる博物館、そこで行われていた事を想像するだけで背筋が凍るようなスポットなど、そこで感じるものも様々。この機会にこれらの地を巡りながら、東ドイツ・ベルリンの壁を様々な角度から考えてみてはいかがでしょうか。
今回は紹介しませんでしたが、ベルリン中心部から少しはなれたホーエンシェーンハウゼンという場所にはシュタージの収容所跡も残されています。実際にここに収容されていた人達がガイドをしていて、当時の体験を直接本人たちから聞く事のできる貴重な場所です。
ベルリン・ホーエンシェーンハウゼン記念館 HP
住所:Genslerstraße 66, 13055 Berlin
ガイドツアー:英語・ドイツ語
アクセス:トラム「Freienwalder Str. 」から徒歩8分
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