【ドイツのお祭り】カーニバルの歴史、スケジュールと楽しみ方

クリスマスやオクトーバーフェストに並んで、ドイツのお祭りで3本の指に入ると言ってもいいカーニバル。

ドイツでは「ファッシング(Fasching)」や「ファスナハト(Fasnacht)」、黒い森では「ファスネット(Fasnet)」と呼ばれています。

特に盛り上がるケルン、マインツ、デュッセルドルフでは仮装した人々が羽目を外して大騒ぎ。「真面目」や「質実剛健」といったイメージとはかけ離れたドイツ人の新たな一面を発見できるかもしれません。

今回はそんなカーニバルから、歴史やスケジュール、楽しみ方のほか、さきほど触れた3都市以外で開催される地方色豊かなカーニバルも紹介します。

ドイツのカーニバルの歴史

大地の神に敬意を表したり、春の訪れを祝う風習として、古くからヨーロッパを中心に根付いていたカーニバル。古代ギリシャ人やローマ人たちはワインや歌を捧げることで神々を祝福したほか、ケルト人には醜い精霊に扮して楽器で大きな音を立てることで寒い冬を追い出す習わしがあったのだそう。

これらの風習が、12世紀ごろにはキリスト教に受け継がれていきます。彼らが定めた復活祭(イースター)前の断食期間と結びついたことで、古来の風習は「46日間の断食期間のまえに思いっきり食べて騒ごう!」というお祭りに姿を変えていったのでした。

特に盛り上がるケルン、マインツ、デュッセルドルフ

ドイツ各地で開催されるカーニバルの中でも、特に盛り上がるのがライン川沿いにあるケルン、マインツ、デュッセルドルフの3都市。これらの町では人々が並々ならぬ情熱をカーニバルに注ぎ、カーニバルは「第5の季節」と言われるほど重要視されています。

動画はマインツのカーニバルの様子。ドイツ語ですが会場の雰囲気は伝わると思います。

ハイライトは「女性のカーニバル(Weiberfasnacht)」からの6日間。この期間中は大きな山車が登場するパレードのほか、イベントも沢山で町中がお祭り騒ぎになります。仮装した人々が羽目を外して楽しんでいる様子も見られ、「ドイツ人は真面目」というイメージを抱いている人が見たらビックリしてしまうかもしれません。

そのほか地方色豊かなカーニバル

カーニバル3都市のほかにも、ドイツ各地で地方色豊かなカーニバルが開催されます。

代表的なものは、黒い森のカーニバル。ちょっと恐い道化師のお面をかぶった人々が町を練り歩く、伝統色の濃いお祭りです。ケルンやマインツとはだいぶ雰囲気が異なるので、両方訪れて違いを楽しむのもおすすめ。

黒い森の中心あたりにあるフィリンゲンでは、「猫のカーニバル」を開催。子供から大人まで猫に仮装した市民が登場し、楽し気な音楽と共にパレードを盛り上げます。

ドイツ、黒い森の町フィリンゲンで楽しむ「猫のカーニバル」

お茶目なドイツ版「ナマハゲ」が登場するロットヴァイルのカーニバル

 

このほかドイツ東部のラウジッツ地方で行われるソルブ人のカーニバルや、中部チューリンゲン州でもドイツ最古のひとつとされるカーニバルが開催されます。

カーニバルの日程

11月11日11時11分に幕開け

カーニバルのハイライトは2月から3月にかけてですが、シーズンが正式にスタートするのは前の年の11月。

マインツやケルン、デュッセルドルフといったカーニバル主要都市では、聖マルティンの日でもある11月11日の11時11分にイベントでシーズンの幕開けが宣言されます。

シーズンスタートするものの11月後半からは断食と悔い改めの期間であるアドヴェントが始まるため、カーニバルのお祭りムードはいったんお休み。皆がクリスマスマーケットを楽しんでいる中、関係者はパレードに登場する山車の制作といった準備に追われます。

1月6日からはイベントラッシュ

カーニバルが再びスタートするのが、「三王来朝」としていくつかの州で祝日になっている1月6日。この日からハイライトを迎えて「灰の水曜日」にカーニバルが終了するまで、パーティーや集会の日々が続きます。

またデパートなどにカーニバル用の仮装コスチュームが登場するのもこの時期から。

ハイライトは「女性のカーニバル」、「バラの月曜日」、「スミレの火曜日」

カーニバルがハイライトを迎えるのが、「女性のカーニバル」からはじまり「バラの月曜日」、「スミレの火曜日」を含む6日間。これがいつになるかは毎年異なりますが、だいたい2月中旬から3月あたりになることが多いです。

2020年の日程は以下の通り。

  • 2月20日:「女性のカーニバル」
  • 2月24日:「バラの月曜日」
  • 2月25日:「スミレの火曜日」
  • 2月26日:「灰の水曜日」

「女性のカーニバル」はその名の通り、女性が主導権を握る日。デュッセルドルフなどでは女性が男性のネクタイをハサミで切ってしまうというイベントも行われるので、男性の方はくれぐれもお気に入りのネクタイをしていかないようご注意を。

「バラの月曜日」とその前にある週末には、各地で大規模なパレードが行われます。仮装した人々が集まった見物人にお菓子をふりまくほか、今話題のできごとや政治を風刺した山車が出ることも多く、見ていてかなり面白いです。

そしてカーニバルは「スミレの火曜日」に最終日を迎え、翌日「灰の水曜日」からはイースターまで46日間の断食期間がはじまります。ここでいう「断食」は本来は肉を絶つという意味。とはいえ現代ではアルコールやお菓子、ゲームなど自分が好きなものを我慢する期間としたり、「この期間は嘘をつかない」など決まり事を作る人が多いみたいです。

ドイツのカーニバルで飛び交う掛け声

カーニバルの掛け声は町ごとに異なり、ケルンでは「アラーフ!」、マインツやデュッセルドルフでは「ヘラウ!」となります。特にケルンとデュッセルドルフはライバル意識が高いと言われているので、それぞれの町で掛け声を間違えないよう要注意。

また「ナリー!ナロー!」というちょっと変わった掛け声が響き渡るのは、黒い森のカーニバル。パレードを行く人々が「ナリー!」というのに対し、「ナロー!」と応えるとお菓子を投げてもらえます。

カーニバルの楽しみ方

とにかく飲んで騒ぎまくる

せっかくカーニバルに来たのだから、楽しまなきゃ損!周りのドイツ人たちと一緒になって、ここぞとばかりに飲んで騒ぎまくりましょう。

仮装したければ、デパートなどで簡単なコスチュームを購入できます。仮装まではちょっと…という方は、フェイスペイントをちょっとするだけでもそれっぽい雰囲気になりますよ。

お菓子を集める

パレード参加者からはチョコやグミ、飴などのお菓子が大量にばらまかれるので、たくさん集めたければ袋を持って行くのがおすすめ。

中には袋いっぱいになるまでお菓子を集める猛者もいたりします。

カーニバル定番の揚げドーナツ「クラプフェン」を食べる

カーニバルの時期にドイツで食べてみたいのが、揚げドーナツのクラプフェン。

表面に砂糖をまぶしたシンプルなものは普段からパン屋さんやスーパーに置かれていますが、カーニバルの時期には様々なバリエーションが登場。チョコクリームやエッグリキュールのクリームが入ったクラプフェンはどれも可愛らしくデコレーションされ、見かけるととつい手が伸びてしまいます。

結構大きく見えるものの、生地がフワフワなので1個ペロリと完食できます。いくらでも食べられそうですが、揚げドーナツ+クリームとかなりカロリー爆弾なので、ダイエット中の方は1個で我慢したほうがいいかも。次の日は断食する!という固い意志があるならば、2個くらい食べてしまっても問題ないでしょう。

カーニバルで注意すること

防寒対策はしっかりと!

カーニバルが行われるのは2月中旬~3月はじめのまだ寒い時期なので、防寒対策はしっかりして出かけましょう。

パレードを見学するとなれば、2時間くらいは立ちっぱなしの状態。一見暖かそうな日でも、ずっと動かないでいると足元からどんどん冷えてきます。気温がどの位上がるかはその年になってみないと分からないものの、最後まで楽しむためにもしっかり対策するに越したことはありません。

ちなみに2019年に黒い森のカーニバルを取材したときは、時期が3月の頭だったにも関わらずダウンコートを着ても凍えるくらい寒かったです。

休みになるお店が多い

カーニバルは正式な祝日ではないものの、ケルン、マインツ、デュッセルドルフなど力を入れている町では多くのお店がクローズします。会社も休みになったり従業員がぐんと減る場合が多く、以前この時期にデュッセルドルフの会社に電話した時には「今日はカーニバルだから○○さんはいないよ!」と返された事がありました。

お店がクローズしてしまうので、ショッピングを楽しみたい方は要注意です。

おわりに

ドイツ人がここぞとばかりに羽目をはずし、飲んだり騒いだりして楽しむカーニバル。カーニバル3都市であるケルン、マインツ、デュッセルドルフほか各地でも特色のあるカーニバルが楽しめ、いろんな町で見比べてみるのも楽しいですよ。

見物するだけでなく、一緒に楽しむのももちろんOK。仮装したりビール片手に周囲の人と盛り上がれば、旅のいい思い出になりそうですね、

黒い森のカーニバルについては以前の取材記事があるので、興味ある方はこちらも読んでみてください。このほかドイツで開催されるお祭りの年間リストは「ドイツで開催されるお祭り・イベントまとめ」から探せます。

ドイツ、黒い森の町フィリンゲンで楽しむ「猫のカーニバル」

お茶目なドイツ版「ナマハゲ」が登場するロットヴァイルのカーニバル