ザクセン州のバーチャル・ファムトリップに参加しました(ドレスデン、マイセン、ゲルリッツなど)

ザクセン州観光協会によるバーチャル・ファムトリップに参加したので、その様子を紹介します。

ザクセン州はチェコやポーランドと国境を接する東ドイツの地域。

州都のドレスデンほか「音楽の街」であるライプチヒ、木工伝統が受け継がれるエルツ山地などなど、実に多彩な文化が融合する場所です。

バーチャル・ファムトリップの概要

今回のファムトリップは6日間。

観光局のヴォルフガングさんが各スポットを案内するという設定のもと、Youtubeを使って毎日1時間のライブ配信が行われました。

日程と訪れた町は以下の通り。

  • 1日目:ドレスデン
  • 2日目:ドレスデン、ザクセンスイス
  • 3日目:マイセン、モーリツブルク城、ヴァッカーバルト城のワイナリー
  • 4日目:フライベルク、ザイフェン、アナベルク・ブーフホルツ
  • 5日目:ツヴィカウ、ライプチヒ
  • 6日目:ゲルリッツ、バウツェン

配信中はコメント欄から質問ができ、それに対しヴォルフガングさんやほかの参加者が答えているという場面もありました。

6日間のハイライト

ファムトリップのハイライトと、個人的に興味深かった場面を紹介します。

※資料提供:Sachsen Tourismus

1日目:ドレスデン

1日目の訪問先はドレスデン。まずヴォルフガングさんがドレスデン空港で私達をピックアップし、エルベ川クルーズをしながら旧市街へ。その後、旧市街の観光をするという内容です。

ドレスデン空港

こぢんまりとして使いやすいドレスデン空港から旅はスタート。

ドレスデン郊外にあるピルニッツ宮殿。ここからエルベ川のクルーズ船で旧市街を目指します。

ドレスデン

川沿いのワイン畑やお城の風景を楽しんでいるうちに、船は旧市街へ到着。

Penck Hotel

宿泊先として紹介されたのは、ミッテ駅のすぐ近くにある「Penck Hotel」。ドレスデン出身の芸術家A.R.ペンクをテーマにした4つ星ホテルで、エントランスや部屋には彼の作品が展示されていてまるで美術館のようでした。

駅近のほか旧市街の見どころへも徒歩15分くらいの場所にあり、立地はとても良いと思います。

ホテルチェックインのあとは、旧市街に出てドレスデンやかつてこの地を治めていたザクセン王国の歴史についてレクチャー。写真はドレスデン城の壁にある「君主の行進」で、約2万3000枚のマイセン製タイルを使ってザクセン王国の歴代君主が描かれています

そして1日目の締めには、聖母教会の目のまえにあるレストラン「Pulverturm」へ。

ドレスデン Pulver Turm

「火薬塔」という名前の通り実際に火薬庫だった建物を利用した雰囲気のあるレストランで、中はテーマの異なるいくつかの部屋に分かれています。

前菜として出てきたのはザクセン風ポテトスープ。メインはボリュームたっぷりの肉料理で、ドイツ料理をがっつり食べたい人におすすめな感じでした。

ドレスデン アイアーシェッケ

デザートはザクセン地方のお菓子「アイアーシェッケ」。スポンジ生地、クヴァーク生地、カスタードクリームの層と3層になっていて、私も食べた事がありますがフワフワしたチーズケーキみたいな食感です。カフェのほかパン屋さんにもあり、お店によってはレーズンが入っていることもあります。

ちなみにですが、Pulverturmのすぐ隣にある「Coselpalais」というレストランも個人的にかなりおすすめ。Pulverturmに比べるとシック&優雅な雰囲気で、料理はもちろんデザートのケーキ類もとても美味しいです。

2日目:ドレスデン、ザクセンスイス

2日目はまずドレスデン旧市街の見どころを訪問。その後はチェコとの国境周辺に広がる「ザクセン・スイス」という地域に向かい、ケーニヒシュタイン要塞や高さ200mの岩々が見える「バスタイ」という場所を訪れました。

ドレスデン シュタールホーフ

建物の装飾が美しいドレスデン城の中庭は「シュタールホーフ」と呼ばれ、かつてここで馬術競技が開催されていたのだそう。毎年クリスマスの時期にはここで中世のクリスマスマーケットが開催され、他とはひと味違った雰囲気のマーケットが楽しめます。

そしてドレスデンのシンボルでもある建物が、ノイマルクトにある聖母教会。第二次大戦の空襲をうけて崩壊後は40年以上にわたり瓦礫が放置され、1990年代になってようやく世界中から集められた寄付により再建が始まりました。

所々に見える黒い部分は、崩壊前に使用されていたレンガを再利用したもの。

教会内部も立派ですね。

ところ変わってツヴィンガー宮殿には、アルテ・マイスター絵画館磁器博物館が入っています。ラファエロの有名な2人の天使が描かれている「システィーナの聖母」があるのもここ。

アルテ・マイスター絵画館

ほかにもレンブラントやルーベンス、フェルメールといった15世紀~18世紀に活躍した巨匠たちの作品がずらりと並び、見ごたえたっぷりです。

このほかゼンパー・オペラやレジデンツ宮殿、緑の円天井を訪問。

特に凄かったのは、ダイヤモンドなどの宝石や金をふんだんに使った「デリーの王国」。完成までに6年もかかったというのだから驚きです。

そして緑の円天井で最も高価が品がこちら。「ドレスデン・グリーン」と呼ばれる緑色の天然ダイヤモンドで、重さは41カラットもあるのだそう!緑の円天井はちょうど今から1年くらい前に巨額の盗難被害に遭っていますが、当時このダイヤは別の美術館に展示されていて無事だったなんて話もあります。

ドレスデン旧市街の後に向かったのは、チェコとの国境周辺に広がるザクセン・スイスというエリア。

ケーニヒシュタイン

ケーニヒシュタイン要塞は見晴らしのいい山の上に建てられ、ここからの眺望も抜群。かつてはザクセン王国の財宝をここに隠したり、監獄としても使われていたのだそうです。

第二次大戦後からは城博物館になっていて、巨大なワイン樽深さ142mもある井戸チャペルなどが見学できます。

バスタイ

そしてザクセン・スイスのもう一つの見どころと言えば、高さ200mもの岩がいくつもそそり立っている「バスタイ」。見晴らしスポットからの絶景が楽しめるほか、この景色を見ながらレストランでの食事も素敵でした。

3日目:マイセン、モーリツブルク城、ヴァッカーバルト城のワイナリー

3日目にまず訪れたのは、高級磁器「マイセン」の故郷。かつて磁器製作所として使われていたアルブレヒト城や旧市街、1523年に建てられた歴史ある建物を利用したレストランを見学後、町はずれにあるマイセン博物館に向かいました。

マイセン博物館

歴代のマイセン作品のほか、制作過程も見学できるマイセン博物館。

マイセン博物館

熟練した職人たちが華麗な手さばきでパーツの組み立てや絵付けを行う様子、を間近で観察できます。

マイセン博物館

ちなみに博物館のエントランスにあるゲルマニア像は、マイセンの像の中で最も大きいそうです。

レストラン・カフェも併設されていて、ここではマイセン食器で食事が楽しめます。ティーセレモニー的な物もあるそうで、ホットチョコレートを飲みながらチョコレートがヨーロッパに渡った歴史などがレクチャーされるのだとか。

せっかくマイセン博物館に来たのだから、ぜひ食べてみたいのが「マイセン・トルテ」。マイセン磁器の様な見た目で、中はカカオスポンジとバタークリームの層になっています。私も実際に食べた事があるのですが、見た目ほど重くなくて美味しいです。

マイセン博物館の次に訪れたのはモーリツブルク城。かつてアウグスト強王が狩りの館として使っていたお城で、鹿の角が壁にびっしり飾られた「食堂の間」や、タペストリーやベッドの天蓋の模様に100万枚もの羽が使われている「羽の間(Federzimmer)」などが見事でした。

そしてこの日最後の目的地は、ドレスデンから30分ほどの場所にあるヴァッカーバルト城。ここはザクセン州立ワイナリーになっていて、ワイナリー見学やテイスティングのできるツアーもあるそうです。

ワイン畑に囲まれた美しいロケーションは結婚式会場としても人気。レストランが併設されていて、天気がよければ眺めのいい庭でワインや食事が楽しめます。

ちなみにザクセン州のなかでも、ドレスデンを挟んだエルベ川沿いはワイン生産が盛ん。地理的にはだいぶ北に位置するエリアですが、比較的温暖な気候なためワインの生産も可能なんだそうです。

生産されているワインはミュラートゥルガウやリースリング、ピノノワールなどがありますが、注目すべきはこの地でのみ栽培されている「ゴールドリースリング」という品種。「金のリースリング」と、名前からしてすごいですよね。

ザクセンのワインは生産量が少なく他の地域ではなかなか見つからないので、ワイン好きの人は旅行の際にぜひ地元産のワインも味わってみてください。

4日目:フライベルク、ザイフェン、アナベルク・ブーフホルツ

4日目の舞台はチェコとの国境線にある「エルツ山地」が舞台。フライベルクやザイフェン、アナベルク・ブーフホルツといった小さな町で、昔から受け継がれた伝統工業や文化に触れました。

ちなみにエルツ山地は2019年、「エルツ山地工業地域」として世界遺産に登録されています。

まず訪れたのはフライベルク。中世から鉱山で栄えた町で、お城の中にある鉱物博物館はこの町に来たら必ず訪問したいスポットです。

博物館には様々な色や形、大きさの鉱物が展示されています。

町のもう一つの見どころは大聖堂。

フライベルク 大聖堂

入り口アーチの美しい彫刻や神々しさを放つ祭壇、ザクセンの宮廷オルガン職人でもあったゴットフリート・ジルバーマン作のオルガンなど、隅々まで目が離せません。

天井画の天使たち。ちょっと分かりにくいですが、持っている楽器は本物なんだそうです。

フライベルクの次にやってきたのはザイフェン。木工製品のクリスマスグッズで有名ですが、中でもこの町を象徴するのが「くるみ割り人形」でしょう。

町の工房では制作の様子を見学できるほか、ワークショップも開催。

ザイフェン

巨大なくるみ割り人形やピラミッドはさすがに持って帰れませんが、小さなクリスマスグッズはお土産に購入しても良さそうですね。

アナベルク・ブーフホルツ

そしてこの日最後に訪れたのがアナベルク・ブーフホルツ町の中心にあるマルクト広場で開催されるクリスマスマーケットは、ドイツ最古のマーケットのひとつでもあります

装飾が見事な教会やハンマー技術の博物館のほか、特に興味深かったのはこの地に伝わるクリスマスの伝統ディナー。周囲にならぶ9つの食材には、それぞれ来たる年への願掛けの意味が込められているのだそうです。

例えばジャガイモ団子は「金運」、リンゴは「健康」、ビーツは「美」といった感じ。ドイツのクリスマスでは地域によって鯉を食べたり、家庭によってガチョウのローストやソーセージが出されますが、こんな風に9つの食材が並んでいるのは初めて見ました。

5日目:ツヴィカウ、ライプチヒ

5日目に訪れたのは、アウディ誕生の地であるツヴィカウとライプチヒ。

ツヴィカウはアウディの前身である高級自動車「ホルヒ」を生み出した町。ホルヒというのはアウグスト・ホルヒ氏が1898年に創設した自動車メーカーで、経営陣との対立から会社を去ったホルヒ氏が新たに立ち上げた会社がアウディになります。

その後1932年には米自動車メーカーのドイツ進出に対抗すべく、ホルヒ、アウディ、オートバイメーカーのヴァンダラー、DKWの4社で「アウトウニオン(自動車連合)」を結成。アウディのロゴである4つの輪は、それぞれがこの4社のメーカーを象徴しているのです(左からアウディ、DKW、ホルヒ、ヴァンダラー)。

アウグスト・ホルヒ博物館

話をツヴィカウに戻しますが、ここにあるアウグスト・ホルヒ博物館はかつてのアウディ工場を利用した博物館。館内にはホルヒ社の歴代車や会社の歴史、DDR時代にホルヒ社が製造していた「トラバント」などが展示されています。

ツヴィカウの次に訪れたのは、ザクセン州最大の都市であるライプチヒ。主要スポットが中心にまとまっていて観光しやすいほか、ナイトライフやスポーツも充実。通りにはルネサンス様式の建物が並び、どこか上品な雰囲気でもあります。

中心地で有名な教会は2つありますが、そのひとつがニコライ教会。東西ドイツ時代にはこの教会で開かれていた「平和の祈り」という民主化を求める集会がやがて大規模なデモへと発展し、東西ドイツ統一へのきっかけになりました。

またライプチヒはバッハやワーグナー、メンデルスゾーンといった音楽家と深い繋がりがあるほか、世界初の市民オーケストラとして1743年に結成されたゲヴァントハウス管弦楽団が拠点をおく「音楽の街」。

バッハが音楽監督を務めていたトーマス教会やバッハ博物館、メンデルスゾーン・ハウスなど、偉大な音楽家ゆかりの地も沢山あります。

このほかにも、町の至るところに美しいアーケードがあるのもライプチヒの特徴

アウアーバッハス・ケラー

中でも美しいのがイタリアのミラノにあるガレリアをモデルにしたと言われる「メドラー・パサージュ」で、地下にあるレストラン「アウアーバッハス・ケラー」ではゲーテの「ファウスト」をイメージした雰囲気ある店内で食事が楽しめます。

アウアーバッハス・ケラー

メインの牛肉ロール煮込み。

デザートも美味しそうですね。

6日目:ゲルリッツ、バウツェン

最終日に訪れたのはゲルリッツとバウツェン。

ゲルリッツ

ゲルリッツはポーランドとの国境にある町で(橋を渡ればもうポーランド)、旧市街には戦禍を逃れた美しい建物が数多く残されています。

町のハイライトのひとつでもあるのが、シレジア地方の歴史が学べるシレジア博物館

オーバーラウジッツ学術図書館も見事ですね。

また美しい街並みや建物が多いゲルリッツは、映画のロケ地としても人気。世界一美しいアールヌーボー様式のデパートと言われる「Kaufhaus Görlitz」は、「グランド・ブダペスト・ホテル」の舞台として有名です。

細部まで念入りに施された装飾が美しい館内。私もいつか訪れてみたいと思っている場所です。

バウツェン

最後に訪れた町はバウツェン。ドレスデンから電車で1時間ほどの場所にあり、ドイツでは少数民族であるソルブ人が住む町としても知られています。

ソルブ人といえば、以前このブログで紹介した「シュプレーヴァルト」もソルブ人が多い地域でしたね。

バウツェン

町の雰囲気はドイツというよりも、国境が近いチェコやポーランドに似ているなと思いました。

またバウツェンはマスタードが特産品。大聖堂の近くには「Bautz’ner Senfladen」というマスタード博物館&工房があり、色々な種類のマスタードからお気に入りを探したりもできます。

そしてツアーの締めくくりとして紹介されたのが、ドレスデンにある「Alte Meister」というレストラン。

ドレスデン Alte Meister

ツヴィンガー宮殿の脇という観光に便利な立地にあるので、季節の食材を取り入れながら丁寧に調理された料理が楽しめます。

ドレスデン Alte Meister

ピーチコンポートのデザートも美味しそうでした。

6日間のバーチャルツアーに参加した感想

コロナで旅行や取材ができないなかで開催された、今回のバーチャル・ファムトリップ。

毎日1時間とはいえ毎回の内容がとても充実していて、今まで知らなかったザクセン州の魅力に沢山触れることができました。

まだ未訪問のスポットはもちろん以前訪問したことのある場所でも色々と学ぶことがあり、情報量の多さに毎回頭がパンクするかと思いました…

一方で家に居ながらつかの間の旅行気分を味わえたものの、やっぱり現地に行って実際に見たり体験してみたいという思いが強くなったのも事実。今回のツアーも素晴らしかったですが、実際にその場に立つのとでは感動の大きさが全く違いますよね。

という訳でまた旅行が出来るようになった時には、ツアーの復習も兼ねてザクセン州を訪れるのもいいかなと思いました。

美し町並みのほか音楽にワイン、美しいお城やザクセン王国の財宝などなど、多彩な魅力たっぷりのザクセン州。コロナ禍後のドイツ旅行を計画している人は、ザクセンもぜひ候補地に入れてみてはいかがでしょうか。

 

※画像資料:Sachsen Tourismus