南ドイツ、古城街道にある美しい古都ハイデルベルク

前回紹介したヴァインハイムを取材した翌日はハイデルベルクへ向かいます。

ハイデルベルクは南ドイツ観光の定番となっている人気都市。マンハイムからチェコのプラハまで続く古城街道に属し、ハイデルベルク城や哲学の道からは「古都」と呼ぶにふさわしい美しい街並みが望めます。

またドイツ最古の大学があり「大学の町」としても有名なハイデルベルク。観光客はもちろん若い学生たちの姿が多く、町はエネルギーに満ち溢れていました。

ハイデルベルクの見どころ

旧市街を散策してからハイデルベルク城に上るというのが王道コース。時間の関係から哲学の道を省いてしまう人も多いですが、町一番の絶景が望めるのが実はここ。ツアーでは難しいかもしれませんが、個人旅行の方だったらなんとか時間を作って訪れてほしいです。

目抜き通りからは趣のある細い小道がいくつも伸びているので、そこをのんびり散策するのもおすすめ。

学生牢

「大学の町」ハイデルベルクらしいスポットのひとつが、学生牢。かつては多くの大学が自らの裁判権を持っていて、警察ではなく大学が罪を犯した学生を裁いていました。罪を犯した学生の牢獄はどの町にもあったそうですが、なかでも有名なのがハイデルベルクにあるもの。1712年から1914年まで、約200年間にわたり使用されていました。

投獄されていたのは、決闘や喧嘩、物を壊すなど騒ぎを起こした学生達。投獄期間は2日日~長くて4週間でした。壁や天井には炭やロウソクのすすで描かれた落書きが所せましとあり、牢獄なのになんだか楽しそうな雰囲気が漂っています。

それもそのはず。ここに入ることは名誉でもあり、卒業までに一度は入りたいと考えていた学生も多かったのです。ゆえに学生達は天井や壁に自分の名前と投獄期間を書き、自分がここで過ごしたという証を残していきました。

それぞれの部屋に「サンスーシ」や「グランドホテル」といった牢獄とは正反対の優雅な名前を付けたり、トイレを「戴冠の間」と名付けるなど、ユーモアのセンスもたっぷり。投獄中も大学の授業に出席できたほか、外部からの差し入れや入牢者同士の行き来も許されるなど、学生たちはここでの生活を楽しんでいたそうです。

ちなみにチケット売り場にはマグカップやパーカーなど、大学のロゴが入ったグッズを販売しています。「大学の町」らしいお土産を探している方は、ちょっと覗いてみると面白いものが見つかるかもしれません。

学生牢(Studentenkarzer) 

【住所】Augustinergasse 2.
【営業時間】
4月~8月
10:00~18:00
9、10月
10:00~16:00、土曜のみ~18:00
11月~3月
10:00~16:00、日曜休館
【料金】3€
【アクセス】マルクト広場から徒歩5分、またはバス停「Universitätsplatz」から徒歩1分

 

大学図書館

大学関連でもうひとつ足を運びたい場所が、学生牢のすぐ近くにあるハイデルベルク大学の図書館です。約7000冊の写本をはじめ、蔵書数は320万冊以上。設立は大学と同じ14世紀までさかのぼり、1905年に大規模改装を行った建物が現在まで図書館として使用されています。ルネサンス様式とユーゲントシュティールが融合した正面のファサードは、まるでお城のよう。

図書館は一般の人でも自由に出入りする事ができます。階段の美しい吹き抜けは、ユーゲントシュティールらしいエレガントな雰囲気。

階段を上がったところには本に関する歴史が展示されています。蔵書室には「マネッセ写本」の一部もあるはずでしたが、私が行った時には別の機関に貸し出し中のようで置いてませんでした。「マネッセ写本」というのは、中世に活躍したミンネゼンガー(宮廷詩人)140人の歌を、美しい挿絵とともに収録した写本。なかでもヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデが描かれているページが有名で、彼が歌を考えている様子が美しい色使いとともに表現されています。

聖霊教会

マルクト広場に立つ聖霊教会はプファルツ選帝侯ループレヒト3世の命により建設がはじまり、100年以上もの期間を経て1515年に完成しました。お城や哲学の道からもその堂々たる姿がよく見え、まさにハイデルベルクを象徴する建物です。

教会内部にはゴシック様式が取り入れられ、細い柱で支えられた高い天井のうえには美しいアーチが無数に見られます。巨大なステンドグラスから太陽の光が取り込まれ、教会にしてはとても明るくて開放的。

かつてはプファルツ選帝侯の埋葬地として合計54の選帝侯の墓が置かれていた聖霊教会。現在あるのはル-プレヒト3世と妃エリザベートの墓のみで、残りはプファルツ継承戦争のさなか、この地を攻めたフランス軍により全て破壊されてしまいました。ループレヒト3世が持っている王笏(杖)や王冠は「威厳」を表しているほか、足元にいるライオンは「強さ」、犬は「忠誠」を象徴しています。

入り口すぐの場所にあるは、広島の原爆投下を題材にした「物理学の窓」というステンドグラス。1945年8月6日を経験した人々の怒りや悲しみを表現しているかのような真っ赤なステンドグラスに、聖書の引用とアインシュタインの公式「E=mc2」が記されています。

聖霊教会(Heiliggeistkirche)

【住所】

 

カール・テオドール橋

ネッカー川にかかる美しい石橋は、カール・テオドール橋。選帝侯カール・テオドールの命により1788年に作られた橋で、「アルテ・ブリュッケ」とも呼ばれています。

2つの白い塔がある門は、かつては町の城壁の一部でした。門には管理人が住み通行者から税を徴収していたほか、敵が攻めてきた際には落とし格子を下げて侵入を防いでいたそうです。

門のすぐ横にいるのは、1979年に設置されたブロンズ製のサルの像。この「橋のサル」の歴史は15世紀にまで遡り、17世紀のプファルツ継承戦争で破壊されるまではサルの石像が門の上に置かれていました。当時のサル像はおしりをマインツの方角に向けていて、こうすることでハイデルベルクの人々はこの町がマインツ司教でなくプファルツ選帝侯に属していると意思表示をしていたのだそうです。

ここを流れれるネッカー川は度々氾濫するみたいで、橋脚にはその年と水位が記されています。今の橋が完成するまでは木製の橋が架けられていましたが、川の増水により幾度となく破壊されたという過去があります。

ハイデルベルク城

町を見下ろす丘の上には、プファルツ選帝侯の居城として13世紀に建てられたハイデルベルク城が立っています。

30年戦争をはじめとする様々な戦禍に耐えながらも、17世紀のプファルツ継承戦争でフランス軍に破壊されたハイデルベルク城。建物は修復された一部を除いて廃墟のままですが、ロマンあふれる風景が広がり結婚式の会場としても人気です。

お城の門をくぐって敷地内にはいると、立派なファサードが印象的な「フリードリヒ館」が目に飛び込んできます。飾られている人物像はカール大帝やループレヒト1世など、選帝侯の先祖たちです。

ここでの見どころのひとつが、容量20万リットルもの巨大なワイン樽。

樽の正面ではカール3世フィリップが監視を命じた「ぺルケオ」という道化師の像が、今でもちゃんと見張りをしています。大のワイン好きとして知られるぺルケオには、1日にワイン15本を飲んでいたなんて伝説も残されているほど。

オットーハインリヒ館の中には医学発展をテーマにした「薬事博物館」があり、16~19世紀にかけての文書や実際に使用されていた容器、調剤道具などが展示されています。展示内容が興味深いのはもちろん、瓶や陶器製の容器がアンティーク調でとってもキュート。

薬の歴史なので薬用ハーブの展示が多いと思いきや、カエルの皮膚など動物由来の材料も沢山。一見すると薬とは馴染みのなさそうな材料も、かつては治療に使われていたのですね。

お城のテラスからはハイデルベルクの旧市街が一望できます。中心に立っているのは聖霊教会。またネッカー川に架かる橋のアーチがとても美しいですね。

またテラスの地面には「騎士の足跡」と呼ばれるくぼみが。これには選帝侯の妃が浮気相手の騎士と密会し、見つかりそうになって妃の寝室から飛び降りた際についたという伝説があります。くぼみに足がぴったり収まる人は「浮気者」になると言われているので、興味のある方は自分が浮気者か確かめてみてください。

ハイデルベルク城(Heidelberger Schloss) HP

【住所】 Schlosshof 1, 69117 Heidelberg
【営業時間】
城敷地内
8:00~18:00
大樽
8:00~18:00
ドイツ薬事博物館
10:00~18:00(4月~10月)、10:00~17:30(11月~3月)
【料金】8€(ケーブルカー、ドイツ薬事博物館、大樽の共通チケット)
【アクセス】マルクト広場からケーブルカー乗り場まで徒歩1分

 

哲学の道

ハイデルベルクで最も美しい風景が楽しめるのが「哲学の道」。ゲーテをはじめとする多くの詩人や哲学者が、ここを歩きながら思想にふけったと言われています。太陽の位置の関係から、お城に光が当たって全体が綺麗に見えるのは午後~夕方にかけて。ハイデルベルクは旧市街とお城を見たら終わりという方も多いかもしれませんが、この場所から見える絶景こそ沢山の人に見てほしいです。

哲学の道で歩きやすいのは、ビスマルク広場の北にあるテオドール・ホイス橋方面から向かうコース。橋を渡ったら川と並行に走る「ブリュッケンコップフ通り(Brückenkopfstraße)を右折。2つめの左折路である「アルバート・ウエーベレー通り(Albert-Ueberle-Straße)」を曲がって道なりに進んでいきます。

カール・テオドール橋方面からだとかなり歩きにくい坂道を上らなければいけませんが、上に紹介したコースなら上り坂も緩やか。かつ旧市街が常に進行方向に見えるので、いちいち立ち止まって振り返る必要もありません。

午後の遅い時間帯になると木陰も沢山でてくるので、夏でも比較的快適に歩けますよ。写真は7月の終わり、午後5時半頃に撮影した様子。周囲に広がる森には、ローマ人がかつて持ち込んだという栗の木も多く見られました。

哲学の道(Philosophienweg)

【アクセス】
ビスマルク広場から北へ進み、テオドール・ホイス橋を渡る。川と並行に走る「ブリュッケンコップフ通り(Brückenkopfstraße)を右折し、2つめの左折路である「アルバート・ウエーベレー通り(Albert-Ueberle-Straße)」に入って道なりに進む。

 

日本人経営のお土産屋さん「ユニコン」

旧市街の目抜き通りには日本人経営のお土産屋さん「ユニコン(UNICORN)」があります。このお店のすごい所は、在住者から見ても驚くほどの品ぞろえの豊富さ。マイセン食器からフェイラーのハンカチ、ロンネフェルトの紅茶やはちみつ、アンペルマングッズなど、ドイツのお土産なら何でも揃うと言っても過言ではありません。

フェイラーのハンカチでも、ハイデルベルクの町が描かれたご当地ハンカチは必見。他にもドイツ限定デザインが色々あるので、気になる方はぜひお店で確かめてみてください。

商品が沢山で見ているだけでも楽しいので、ついつい長居してしまいそう。またオンラインショップでは日本からお買い物ができます。現地で買い忘れがあった時に覚えておくと便利ですよ。

ユニコン(UNICORN) HP

【住所】Hauptstr. 151-153 , 69117 Heidelberg
【営業時間】
3月~10月下旬および12月1日~23日
8:50~18:00(月~土)、10:00~18:00(日、祝)
10月下旬~11月、12月24日~2月末
8:50~18:00(月~土)

【休業】10月下旬~11月、12月24日~2月末の日、祝
【アクセス】マルクト広場から徒歩1分

 

ビアレストラン「フェッターズ・アルト・ハイデルベルガー・ブラウハウス」

「フェッターズ・アルト・ハイデルベルガー・ブラウハウス」は、カール・テオドール橋からマルクト広場に向かう通りに店を構えるお店。ビアレストランらしく店内にはビールの醸造樽やホップで作った飾りが置かれ、楽しそうにお喋りをする人達でとても賑やかでした。

ビールはへレスやドゥンケルス・ヴァイツェン(茶褐色のヴァイツェン)ほか、季節ごとに限定ビールが登場します。4種のビールを飲み比べできるセットや、アルコール33%というちょっと強めのビール「Vetter 33」も人気。

料理はがっつり肉料理が中心ですが、魚料理やサラダ、チーズ盛り合わのようなおつまみ系も揃っています。取材時は骨を外したシュヴァイネハクセと肉料理(ソーセージ、シュニッツェル、レバーケーゼ)の盛り合わせを頂きました。特にシュヴァイネハクセは骨がなくて食べやすい&お肉もジューシーで美味しかったです。

フェッターズ・アルト・ハイデルベルガー・ブラウハウス(Vetter’s Alt Heidelberger Brauhaus) HP

【住所】Steingasse 9, 69117 Heidelberg
【営業時間】11:30~24:00(日~木)、11:30~26:00(金、土)
【電話】06221/165850
【アクセス】マルクト広場からすぐ

 

世界中の都市がテーマ 4つ星ホテル「ヒップ・ホテル」

ハイデルベルクは旧市街が駅から離れているため、町の観光を楽しむのであれば旧市街の中に宿を取るのがおすすめ。旧市街のホテルであれば夕食後にお城の夜景を見に行ったり、朝まだ誰もいない町を散策するにも便利です。

今回利用したのは、ハウプト通り沿いにある4つ星ホテルの「ヒップ・ホテル」。27ある部屋の名前が「ニューヨーク」や「プラハ」、「ローマ」など都市の名前になっていて、部屋ごとにその都市にちなんだインテリアがされているという凝ったホテルです。

私が泊まったのは「パリ」の部屋。パリのアパートの一室に来たかのようなキュートなインテリアで、フランスだからかビデまでちゃんとありました。あとはドイツにしては珍しくスリッパもあります。

ちょうどチェックイン前の部屋が2つあるというので、他の部屋も見せてもらいました。「アムステルダム」の部屋は、洗練された大人の雰囲気。

「ツェルマット(スイス)」の部屋は、本当に山小屋に泊っているかのような面白い部屋でした。

朝食は特筆するほどでもありませんが、ハムやチーズ、シリアル、ヨーグルトなど一通り揃っています。目の前に小さなスーパーがあるほか主要スポットにも近く、観光にはとても便利な立地です。

ホテル名 ヒップ・ホテル(HIP HOTEL)
☆☆☆☆
住所
チェックイン/アウト 14時/11時
詳細・料金・口コミ » Booking.com
» Expedia

 

ハイデルベルクへのアクセス

各都市からのアクセス

鉄道や格安バス会社「Flixbus」が走っていて、どの町から来るかによっておすすめの交通手段が異なります。例えばフランクフルトから来る場合は電車の方が速いですが、ニュルンベルクからだとバスの方が速いし乗り換えもなくて(電車だと乗り換え2回)楽ちん。チケットも10€くらいからあり、電車よりかなり安いです。

フランクフルト
電車:1時間(乗り換えなし、またはマンハイム乗り換え)
バス:1時間半(乗り換えなし)

ニュルンベルク
電車:3時間半~4時間(乗り換え1~2回)
バス:3時間10分(乗り換えなし)

シュトゥットガルト
電車:1時間(マンハイム乗り換え)

 

中央駅から旧市街へのアクセス

中央駅から旧市街のマルクト広場までは歩くと30分以上かかるので、駅前から出ているトラムかバスを利用しましょう。

トラムの場合は5番か22番に乗って「Bismarckplatz」で下車。広場の東に延びるハウプト通りが旧市街の目抜き通りです。

もうちょっと旧市街の中心部まで行きたいという場合は、バスの利用がおすすめ。32番または32Aのバスに乗り「Universitätsplatz」で下車すれば、学生牢はすぐそこ。マルクト広場も徒歩5分くらいです。

おわりに

南ドイツの観光地の中でも高い人気を誇るハイデルベルク。どこに視線を向けても歴史情緒あふれる風景が広がり、まさに「ドイツの古き良き街並み」の姿がそこにありました。

フランクフルトや近郊の町から日帰りで来れるほか、ここを拠点にあちこち回ってみるのも良いでしょう。近くには前回紹介したヴァインハイムや世界遺産のシュパイヤー大聖堂、同じく古城街道の町マンハイムなど、古城関連の見どころも多いです。

 

取材協力:ハイデルベルク観光局
Vielen Dank an Heidelberg Marketing!

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