ヘルマン・ヘッセ作「車輪の下」の舞台にもなったマウルブロン修道院

シュトゥットガルトの近郊にあるマウルブロン修道院は、12世紀~16世紀にかけてシトー会修道士たちが過ごしていた場所。

中世の修道院がほぼ完全に近い形で保存され、趣のある院内ではつかの間の時間旅行が楽しめます。

これほどまでに保存状態の良い中世のシトー会修道院は、ヨーロッパ内でもここだけ。

宗教改革で修道院が解体されたあとはプロテスタントの神学校が設立され、天文学者のヨハネス・ケプラーやノーベル賞作家のヘルマン・ヘッセもここで学びました。

今回はそんなマウルブロン修道院から、

  • 修道院内の主な見どころ
  • ここに来たら必ず食べたいご当地グルメ
  • 見学の後に立ち寄りたいショップやカフェ
  • アクセスと基本情報

を紹介します。

「車輪の下」の舞台 マウルブロン修道院

「車輪の下」は、ヘルマン・ヘッセが1906年に完成させた自伝的小説。

マウルブロン修道院の神学校に入学したものの半年で脱走、その後は何をしてもうまくいかず挫折を味わった経験が、物語に反映されていると言われています。

物語の内容は、周囲の期待を一身に背負って神学校に入学した主人公ハンスが、「自分らしさ」と「大人たちが作り上げた制度」の間で苦しみ、心身を病んでいくというもの。

内容は暗いですが少年の心の描写が素晴らしく、私もたまに無性に読みたくなります。

中世の趣が色濃く残る院内

マウルブロン修道院の建設が始まったのは1147年。その後は数世紀かけて礼拝堂や食堂、食料の貯蔵室、回廊のほか、敷地を囲む全長約1kmの防御壁などが築かれました。

修道院内では中庭を囲むようにして回廊があり、そこから食堂や教会、談話室などへとつながっています。

あたり一帯を静寂が包みこみ、まるでここだけ時が止まっているかのようです。

アーチの美しい回廊や食堂

ゴシック様式の修道院としてはドイツ最古のマウルブロン修道院。回廊や食堂ではゴシック様式の特徴である、「リブヴォールト」と呼ばれる美しいアーチが天井を彩っています。

10m以上の高い天井の下は、修道士たちの食堂。修道士には位の高い修道士と身の回りの世話などをする平修道士という2つの階級があり、ここで食事をしていたのは位の高い修道士たち。

食事中は1人の修道士が代表して、聖書やほかの書物を朗読していたのだそうです。食事中もそうですが、修道院内での私語は一切禁止されていました。

繊細な絵は16世紀に描かれたものです。

ちなみにこちらが、平修道士たちの食堂だった部屋。現在ではここでミニコンサートなども行われます。

修道院のシンボルである噴水

マウルブロン修道院のシンボルでもあるのが、回廊のわきにある噴水

伝説ではラバ(ロバと馬を交配した家畜)がこの場所に泉を掘り当てたことから、修道院の建設が始まったと言われています。

中世から残っているのは下の受け皿のみで、上部分は19世紀に取り付けられたもの。かつては食堂へ向かう僧侶たちがここで手を清めていました。

回廊に囲まれた中庭

回廊から中庭に出てみると、アーチ型の窓が整然と並んでいる様子がよく分かります。

一ヵ所だけ飛び出ている部分は、さきほど紹介した噴水のある場所。窓のある下の部分は14世紀、木組みになっている上階は17世紀に造られました。

窓の上部にある幾何学模様は「トレーサリー」といい、ゴシック様式以降の教会窓などで見られます。

中にはにはモクレンの木が一本あり、春にはピンクの花が咲き乱れてそれはそれは美しいのだそうです。

似たような修道院の中庭は、ライン川の近くにある「エーバーバッハ修道院」でも見ることができます。こちらもマウルブロン修道院と同じく、かつてのシトー会修道院。

ショーンコネリー主演「薔薇の名前」のロケ地にもなったことがあります。

92もの聖歌隊席がある教会

修道院付属の教会は、アーチを描いたロマネスク様式の壁と、ゴシック様式の天井が融合したスタイル。中央に仕切りがあり、かつては修道士の階級によって入れる場所が決まっていました。

前方のエリアは位の高い修道士のエリアで、ここには15世紀に作られた92席もの聖歌隊席があります。

椅子や壁に彫られているのは、聖書に関連するモチーフ。椅子の裏側などには、神学校の生徒が彫った彼らの名前も残されています。

正面の祭壇上にあるのはキリスト受難を現した彫刻で、14世紀から伝わるもの。

美しい天井にも注目してみてください。訪れたのがクリスマス後だったので、まだヘルンフートの星が飾られていました。

壁を挟んだ後ろ側は、平修道士の場所。十字架にかけられたキリストのすぐ後ろに壁があり、その向こうが先ほど紹介した前方部分です。

そのほかの見どころ

中庭を囲む回廊の奥には、私語が禁じられていた修道院内で唯一会話の許されていた談話室があります。

植物のような模様が描かれた天井が、とても美しいですね。

部屋の奥は神学校への通路になっていますが、一般人は入ることができません。

修道院の外には、かつて修道院と俗世の堺となっていた壁が残されています。中世では俗世の人間が敷地内に立ち入ることは、固く禁じられていました。

修道士たちは敷地内で野菜や果物を栽培したほか、壁の外にも養魚場やブドウ畑を所有し、自給自足の生活を送っていたといいます。

可愛いショップ&カフェ

修道院を見学後は、カフェで休憩なんていかがでしょうか。

敷地内に雑貨屋さんと一緒になったカフェがあり、アットホームな店内でゆっくり寛げます。

外にはこんな彫刻が並んでいて、「魔法使いでも住んでるのか⁉」と思ってしまうほど。リアルなネコの彫刻もありました。

お店に並んでいるのはハンドメイド雑貨が中心。訪問時は季節柄、クリスマス雑貨が多かったです。

カフェになっているのは2階部分。美味しそうなケーキがずらりと並ぶほか、焼きたてワッフルにはアイスなどもトッピングできます。

s`Kloschderlädle

【住所】Klosterhof 22, 75433 Maulbronn(修道院敷地内)
【営業時間】11:00~17:00(火、木~土)、13:00~17:00(日)
【休業】月、水

 

必ず食べたいご当地グルメ:マウルタッシェン

マウルブロン修道院を訪れるのであれば、必ず食べたいのが「マウルタッシェン(Maultaschen)」。

マウルタッシェンはシュヴァーベン地方の郷土料理で、ラビオリをもっと大きくしたような見た目が特徴。パスタ生地にひき肉やほうれん草、スパイスなどを混ぜたフィリングを詰め、炒めたりスープにして食べます。

そしてこのマウルタッシェンの発祥の地でもあるのが、マウルブロン修道院。文章

一説ではとある修道士が復活祭前の断食期間に肉を我慢しきれず、野菜と混ぜた肉を神様から見えないよう生地に包んだのがマウルタッシェンの誕生とされています。

マウルタッシェンはマウルブロン修道院の敷地内や、周辺のレストランで食べることができます。

私が訪れたのは修道院のすぐ近くにある「Klosterblick」というレストラン。小ぢんまりとした雰囲気の良い店内で、マウルタッシェンはもちろん自家製。ほかにシュニッツェルやパスタ、ハンバーガーなどメニューも豊富です。

Klosterblick

【住所】tuttgarter Str. 22, 75433 Maulbronn
【電話】07043 2189
【営業時間】11:30~14:00、18:00~22:00(水曜は夜のみ営業)
【休業】火
【ウェブサイト】Klosterblick

 

マウルブロン修道院 基本情報

マウルブロン修道院の営業時間など、基本情報は以下の通りです。

住所 Klosterhof 5, 75433 Maulbronn
電話 07043  9266 10
営業時間 9:00~17:30(3月1日~10月31日)

9:30~17:00(11月1日~2月28日)

※最終入場は、閉館時間の45分前

休業 12月24、25、31日
ウェブサイト Kloster Maulbronn(英語)

 

大人 8€
割引(学生など) 6€
家族 20€

 

マウルブロン修道院へのアクセス

マウルブロン修道院は地図上ではシュトゥットガルトの近郊にあるものの、アクセスがやや面倒な場所にあります。

[note title=”シュトゥットガルトからのアクセス”]

シュトゥットガルトから電車でMaulbronn Westまで行き、目の前にあるバス停からバス735番でKloster Maulbronn下車。

所要時間は約1時間。
[/note]

土日祝日はバスの便が減るので注意してください。車があれば車で行くのがベストです(無料駐車場あり)。

また5月~10月の日・祝日にはマウルブロン駅に特急電車が停車します。

おわりに

中世の面影が色濃く残るマウルブロン修道院。

時が止まったかのような院内を歩きながら、ここで営まれてきた修道士たちの生活に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

修道院を訪れるのであれば、この地発祥のマウルタッシェンを食べるのも忘れずに!

シュトゥットガルトや近郊でも食べることはできますが、発祥の地で食べればまた感動もひとしおですよ。

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