ドイツには、とても美しいのに日本ではほぼ無名な町が沢山あります。
そのひとつが、今回紹介するシュヴェ―ビッシュ・ハル(Schwäbisch Hall)。
古城街道の沿線にあり、旧市街にはカラフルな木組みの家が沢山。とくにコッハー川を隔てて木組みの家が整然と並ぶ姿は美しいのひとことです。
そんなシュヴェ―ビッシュ・ハルを効率よく観光するモデルルートのほか、アクセスや拠点にすると便利な周辺の町を紹介します。
Contents
塩と銀貨鋳造で栄えた町シュヴェ―ビッシュ・ハル
シュヴェ―ビッシュ・ハルでは紀元前5~1世紀、先住民族のケルト人が住んでいたころから製塩が行われていました。
「ハル」はケルト語で「塩」の意味。同じようにして塩で栄えた他の町にも「ハル」と名前のつく所があり、ドイツのバート・ライヒェンハルやオーストリアのハルシュタットがその例です。また名前に「ハル」がつかないものの、リューネブルクも塩の産地として挙げられます。
中世にはシュヴェ―ビッシュ・ハルで製塩に加えて銀貨の鋳造が行われ、町に巨大な富をもたらしました。町のいたるところに立派な木組みの家があるのは、その名残なのです。
ちなみにシュヴェ―ビッシュ・ハルでは今でも塩分4%ほどの塩水が湧いていて、治療のほか療養などに使われています。
シュヴェ―ビッシュ・ハル観光の所要時間
シュヴェ―ビッシュ・ハルはとても小さな町なので、観光も3時間あれば十分。私達が訪れた際も、ゆっくり旧市街を散策してお昼も食べるのに3時間弱かかりました。
町にはシュヴェ―ビッシュ・ハルや周辺地域の歴史や文化、芸術の展示をするヘリシュ・フランキシュ博物館(Hällisch-fränkisches Museum)もあります。ここも見るのであればプラス2時間を見ておいた方が良いでしょう。
シュヴェ―ビッシュ・ハルのおすすめモデルコース
①対岸に見える木組みの家 ②税務局、資料館周辺 ③マルクト広場 ④ヨ―ゼン塔 ⑤首切り橋
町の中は徒歩で観光します。まず川沿いの木組みの家を見てから旧市街の北端まで行き、首切り橋を渡って川沿いを南下すれば効率よく町を回れます。
対岸に見える木組みの家
コッハー川沿いは遊歩道になっていて、対岸には立派な木組みの家が整然とならんでいます。この場所はシュヴェ―ビッシュ・ハルでも随一の絶景スポットであり、この町の「顔」ともいえるでしょう。
真ん中らへんの旗が掛かっている建物は、さきほど触れたヘリシュ・フランキシュ博物館です。うしろにある一番大きな「ノイバウザール(Neubausaal)」は、かつて大砲や穀物などの保管庫でした。1600年から劇場として使用されているホールがあり、今日でも現役です。
税務局、資料館周辺
税務局と資料館の周辺もまた木組みの家が美しいスポット。背の高い家がびっしりと並んでいる一角は、家がこちらに迫ってくるようで、どことなく圧迫感があります。
家と家のあいだを通る細い道は、ヨーロッパらしい情緒があってとても素敵。のんびり散策するのにもってこいです。
オレンジの建物が資料館、その奥が税務局。建物のあいだには階段があり、そこを上っていくとマルクト広場に出ます。
マルクト広場
南ドイツで最も美しいともいわれている、シュヴェ―ビッシュ・ハルのマルクト広場。市庁舎、ミヒャエル教会、そして数々の木組みの家に囲まれた広場は、どこに目を向けても評判どおり絵葉書のような美しさです。
広場の中心に立つミヒャエル教会。12世紀にロマネスク様式で建設され、15世紀にはゴシック様式に改修されました。
教会前の階段は夏のあいだ野外劇場に様変わりし、ほぼ毎日何らかの劇が上演されます。訪れた日はちょうどステージの設営中でした。
教会の向かいに立つ市庁舎は、バロック様式で宮殿の様ないでたち。双頭の鷲はこの町がかつて帝国自由都市だったことを示しています。
広場の北にある泉は16世紀に造られたものですが、それ以前にはこの場所で桶に入った魚が売られていました。泉の上には、ミヒャエル、ゲオルギス、シモンが、それぞれライオンやドラゴンの悪魔と戦う像があります。
ちなみに泉は、中世には軽罪を犯した者の「さらし台」としても使用されていました。
ヨ―ゼン塔
マルクト広場からどんどん北へ進んでいくと、旧市街の北端にヨ―ゼン(Josenturm)塔が見えてきます。
塔の上に小さな家がちょこんと乗っていて、なんとも可愛らしい外観の塔。かつてこの場所にあった教会の塔だったほか、町を囲む城壁の一部でもありました。
塔から、歩いてきた道を振り返った眺め。カラフルな家が両側に立ち、とても可愛らしい通りです。
首切り橋
ヨ―ゼン塔から川沿いに出てしばらく歩くとたどり着くのが、「首切り橋(Henkersbrücke)」という何とも恐ろしい名前の橋です。
罪人のさらし台があったり首切り橋があったりと、物騒なスポットが目立ちますね・・・。
12世紀後半まで遡る長い歴史を持つ橋。かつては木製でしたが、16世紀初頭に今の様な石造りの橋に生まれ変わりました。第二次世界大戦の際、アメリカ軍の侵入を防ぐためドイツ軍によって破壊されたという過去もあります。
ところで「首切り橋」という名前の由来ですが、「橋の上に首切り人が住んでいた」という間違った言い伝えからこの名前が付けられたのだそうです。橋の上にある悪魔の面は、首切り人ではなくファウストにでてくるメフィストフェレス。
橋からの眺めも素敵です。
橋を渡って川沿いに歩いていくと、屋根付きの橋が見えてきます。
シュヴェ―ビッシュ・ハルへのアクセス
シュヴェ―ビッシュ・ハルへは、シュトゥットガルトまたはニュルンベルクからが訪れやすいです。
シュトゥットガルトからは中央駅(Stuttgart Hbf)からローカル線でSchwäbisch Hall-Hessentalまで行き、そこで乗り換えてSchwäbisch Hallまで。所要時間1時間10分。
ニュルンベルク(Nürnberg Hbf)からの場合も、同様にSchwäbisch Hall-Hessentalで乗り換えです。所要時間は1時間35分。
シュトゥットガルトを拠点にして観光する場合は、メトロポールチケットやバーデン・ヴュルテンベルク州チケット使用の方がはるかにお得です。
シュトゥットガルト⇒シュヴェ―ビッシュ・ハル
片道:19.40€
バーデン・ヴュルテンベルク州チケット:24€
メトロポールチケット:21€
バーデン・ヴュルテンベルク州チケットとメトロポールチケットについては「シュトゥットガルト 基本情報と主要観光スポット」に詳しく書いてあるので、こちらも参考にしてみてください。
またドイツをあちこち回りたい人は、ジャーマンレイルパス利用も検討してみましょう。沢山移動しないと元を取るのは難しいですが、慣れない券売機やカウンターでチケットを買う手間から解放してくれる便利なパスです。
おわりに
ドイツでも屈指の美しさを誇るシュヴェ―ビッシュ・ハル。塩と銀貨製造で栄えた町には今でも立派な木組みの家が残り、訪れる者を中世の世界へと誘ってくれます。
3時間ほどで観光できる小さな町なので、シュトゥットガルトやニュルンベルクからの日帰り観光におすすめ。またはシュトゥットガルトからニュルンベルクに向かう周遊旅行の途中で、この町を経由するのも良いでしょう。
旧市街はとにかく美しく一見の価値あり!ぜひ皆さんも訪れてみてください。
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