夏に注意したい虫のひとつがマダニ。
ドイツで「ツェッケ(Zecke)」と呼ばれるマダニはその辺の草むらなどに普通にいて、暖かくなってくると「そろそろマダニに気をつけて」とよく言われます。
私も注意していたつもりが、自宅の庭でマダニにくっつかれ(この記事を書いた2020年8月)、いつの間にか服の中まで入り込んで咬まれてしまいました。
日本では登山やハイキングの際にマダニへの注意喚起をよく聞きますが、原っぱや河川敷でのレジャー、自宅でのガーデニングでのマダニ被害も報告されています。
マダニ皮膚の中に頭を食い込ませて吸血するのが特徴。危険な病気を媒介する可能性がある厄介な虫でもあります。
そこで今回のテーマは、マダニが体に付かないようにするための対策と、咬まれた時の対処法。
マダニが肌にくっついている様子はそれだけでも気持ちが悪いので、被害に遭わないように出かける前はしっかり対策しましょう。
Contents
マダニとはどんな虫?
マダニの大きさは1mm~5mmほど。冒頭でも触れたように人や動物の皮膚に頭を食い込ませ、数日間かけて吸血をします。
吸血後のマダニは1cmくらいにまで体が膨らみ、私は写真を見ただけですが結構気持ちが悪いです。
マダニが潜んでいるのは草むらの中。葉の先で獲物が来るのを待って足などにくっつき、頭や足の付け根など皮膚の柔らかい場所まで移動してそこで血を吸います。
なので膝くらいの丈がある草むらに入る時やその傍を歩く時、山や森へ行く時はマダニ対策が必要。とはいえ私の場合は5cmくらいの草の上を歩いていただけでもマダニがくっついてきました。
ドイツでは以前は「南ドイツでは要注意」なんて言われていましたが、最近では地域を問わず草のある場所ならどこにでもいるという印象で油断できません。
マダニが媒介する病気
マダニが媒介する病気で代表的な物は以下の4つです。
- ダニ脳炎(初夏脳髄膜炎)
- ボレリア症(ライム病)
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- 日本紅斑熱
ダニ脳炎(初夏脳髄膜炎)
ドイツやオーストリアから東欧、ロシアにかけて感染が見られる病気で、ドイツ国内では特に南部での感染が多いです。
発熱や頭痛など夏風邪のような症状が現れることから「初夏脳炎」とも。1週間程度で治る人がほとんどですが、症状が悪化すると発熱や体の麻痺、意識障害などが起こり、治ったあとも神経系の後遺症が残る場合があります。
ダニ脳炎はワクチンで予防できるので、草むらや森が身近にある人、ハイキングやキャンプへ行く機会が多い人はワクチン接種も検討を。とはいえこの後に紹介するボレリア症などには有効なワクチンがないので、服装や虫除けスプレーなどで対策する必要があります。
ワクチンは3回接種し、3回目終了時の免疫効果は99%。その後は3~5年ごとに追加の予防接種をします。
ボレリア症(ライム病)
マダニがボレリアという細菌を媒介する事でかかる病気で、この細菌を持っているマダニは100匹に1匹いると言われています。
咬まれた場所がリング状に赤くなるのが特徴で、症状は発熱や頭痛、神経症状、関節炎、心筋炎、不整脈など様々。
有効なワクチンはありませんが、抗生物質で治療が可能です。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウィルスを持つマダニに咬まれることで感染し、日本のほか中国や韓国、台湾、ベトナムなどで感染が確認されています。
日本ではダニのウィルス保有率が0~数%で、西日本を中心に毎年60~100人が感染。発熱や全身の倦怠感、嘔吐や食欲不振、下痢といった消化器系の症状が初期症状として現れ、重篤化すると死亡するケースもあります(致死率30%)。
有効なワクチンはないので、ダニに咬まれないするのが最大の予防方法です。
日本紅斑熱
全身に広がる赤い斑点や発熱、頭痛、倦怠感が症状。感染は西日本で多いです。
ワクチンはなく、感染したら抗生物質の投薬を行って治療をします。
マダニに咬まれないための対処法
ここからはマダニに咬まれないための対処法を紹介します。
草むらに入る時、キャンプや登山など野外活動をする時、原っぱで遊ぶときなど気をつけてみてください。
肌の露出を少なくする
体にマダニがくっつかないためには、まず肌の露出を抑えるのが大切です。
ハイキングなどでマダニが多そうな場所へ行くときは長袖、長ズボンを着用。足をしっかり覆う靴を履き(サンダルはNG)、ズボンの裾は靴下の中に入れてしまいます。
ちょっと見た目は悪いですが、トップスの裾もズボンの中にしまうと安心。とにかくマダニが服の中に入り込むのを防ぐのが重要です。
服の色は明るめのほうが、マダニが付いた場合に分かりやすいです。とはいえ白っぽい色はマダニをおびき寄せるとも言われているので(動物がいると思うらしい)、何か服にくっついていないか小まめに確認する方が良いでしょう。
、、、とはいえ真夏に長袖はさすがに厳しいですし、半袖やTシャツの方がはるかに快適ですよね。。後ほど解説しますが、そういう時はハイキングや庭仕事から帰宅後に全身くまなくチェックすると良いでしょう。下着も全部脱いでチェックした方が確実です。
草むらに入らない
マダニがいそうな草むらには、必要な時以外は入らないように。
どうしても入らないといけない場合は、前項で紹介したように服装を気をつけるか、後ほど紹介する虫よけスプレーの使用がおすすめです。
丈の長い靴を履く
そこまで背が高くない草むらでも心配な場合は、丈の長い靴を履くと安心。
私はマダニに咬まれてからというもの、自宅の庭で何かするときには真夏でも長靴を履くようになりました。
草の高さは5cmくらいしかありませんが、長靴を履くだけでも安心感がとても大きいです。紺色の長靴を買いましたが、もっと明るい色の方がマダニが付いた時に分かりやすくていいと思います。
マダニに効果のある虫よけスプレーを使う
真夏で長袖を着たくない時、ちょっと外を歩くだけだけど心配な時はマダニに効果のある虫よけスプレーを使ってみましょう。
特に効果があるのは「ディート」や「イカリジン」という成分の入ったスプレー。乳児や子供に使用できない製品もあるので、購入時にしっかり確認を。
ちなみに私がドイツで使っているのはAutanというメーカーから出ている「Multi Insect Pumpspray」。マダニのほか蚊とアブにも効果のあるスプレーです。
ちょっと匂いが強いですが、周囲のドイツ人たちがオススメするので彼らの言葉を信じて使っています。
虫よスプレーは効果が高くなるほど肌への刺激も大きいので、肌が弱い人やお子さんなどには低刺激の商品を使うと安心です。
直接肌に付けるのが心配なら、服の上から使える商品を使うのもいいですね。
外から帰ったら服を脱いで全身をチェック
マダニがいそうな場所から帰ってきたら、服を脱いでマダニがくっついていないか全身をくまなくチェック!
吸血する前の段階で発見できれば、マダニを指やピンセットで比較的簡単に取り除けます。マダニは皮膚の柔らかい場所を探して吸血するので、わきの下や脚の付け根、膝の裏、頭などは念入りに見るのがポイントです。
小さいマダニはゴミやほくろのようにしか見えない事もあるので、見逃さないためにもよく観察を。
また人間のほか、ペットの体にくっついて家の中に持ち込まれる可能性もあります。犬はお散歩の後など、外を歩き回るネコも定期的に全身チェックをしましょう。
自宅の庭なら:マダニが嫌う植物を植えてみる
自宅の庭でマダニ対策をしたいなら、マダニが嫌がる植物を植えてみるというのも1つの対策。
以下の植物にはマダニを追い払う効果があるそうです。
- ラベンダー
- ローズマリー
- イヌハッカ
- タンジー
- シロバナムシヨケギク
我が家では草だけ生えていて使っていない場所に、早速ラベンダーを植えてみました。
どれほど効果があるのかは分かりませんが、草だらけの場所がこれらの植物に代わるだけでもマダニの数は減らせるのでは…という淡い期待を寄せています。
例えそこまでマダニ予防効果が無くてもラベンダーやローズマリー、イヌハッカはハーブとして使えますし、シロバナムシヨケギクは蚊やアリ、ムカデなど害虫に対する虫よけ効果もあるそうなので、あっても困らないかと。。
このほか、あまりにも被害がひどい場合は農薬をまくという方法もありますが、商品によってはミツバチなどほかの昆虫も殺してしまうほか、ペットに被害が出る可能性もあるので商品選びは慎重に。
咬まれた時の対処法
頭まで食い込んでしまったマダニは普通のピンセットでは取りにくく、マダニ専用のピンセット(ドイツ語だと「Zeckenzange」)を使用します。
専用ピンセットは薬局やドラッグストア(dmなど)で購入可能です。
取り方の手順は以下の通り
- なるべく皮膚に近い場所でマダニを掴み、マダニの体をまっすぐ持ち上げる
- ゆっくり、まっすぐ上に引き上げる
- マダニに咬まれた部分を消毒する
下の動画が分かりやすいので、こちらも参考にしてみてください。
刺激したり強く掴みすぎたりすると、ウィルスを含んでいる可能性のある体液が逆流するかもしれないので注意が必要です。
マダニを除去してから2週間くらいは様子を見て、体調が悪くなるようなら医療機関を受診します。
自分でマダニを取れない、とる自信がない場合は、最初から医者へ行く方が良いです。慣れていない人はマダニを刺激してしまったり体の一部が残ってしまう可能性があるので、無理して取るのは禁物。
マダニ対策:まとめ
見た目が気持ち悪いだけでなく、病気も媒介するかもしれない厄介なマダニ。
ダニ脳炎に関してはワクチンもあるので、山や森によく行く人や感染例の多い地域に住んでいる人はワクチン接種で感染が予防できます。
咬まれても必ず感染する訳ではないのでそこまで怖がる必要はありませんが、やっぱり気持ち悪いですし咬まれないのが一番。
夏はバーベキューやキャンプ、登山など自然の中でのアクティビティが増えるので、しっかり対策して被害に遭わないよう気をつけたいですね。
マダニが媒介する感染症については厚生労働省のサイトで解説されているので、こちらも参考にしてください。
▶ 厚生労働省:ダニ媒介感染症