国際結婚が決まったら考えないといけないのが、「姓」をどうするかという問題。
日本では妻または夫のどちらかが相手の姓に変えますが、ドイツではこのほかに「夫婦別姓」、「ダブルネーム」という合計3つの選択肢があります。
人によって「今の苗字に愛着があるからできれば残したい」、「夫の姓になっても構わない」など考えもさまざまでしょう。
とはいえ、どの選択肢を選んでも後になって後悔しないよう、それぞれのメリットとデメリットをあらかじめ知っておくことはとても大切です。
という訳で、今回は「ドイツ人と国際結婚したら姓はどうなるのか」がテーマ。
「妻または夫が相手の姓に変える」、「夫婦別姓」「ダブルネーム」から、それぞれの特徴やメリット&デメリットを紹介します。
また私は夫の姓に変えましたが、どんな基準でその選択をしたのかにも触れていきます。
国際結婚で姓の選択に迷っている人は参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 夫婦同姓、夫婦別姓、ダブルネームそれぞれのメリット&デメリット
- ドイツで夫婦別姓にしたら日本での姓はどうなるのか
- ドイツのカップルは結婚後の姓をどうしているのか
Contents
妻または夫がパートナーの姓に変える「夫婦同姓」
夫婦同姓は日本でもおなじみのシステム。ここでは「自分がパートナーの姓に変える」という設定でメリットとデメリットを紹介します。
【メリット】
- 家族としての一体感が生まれる
- 結婚したと実感できる
【デメリット】
- パスポートやクレジットカードなどの名義変更が面倒
- 仕事やキャリアに支障の出る可能性がある
- 日本で外国の姓は目立つ
メリット①:家族としての一体感が生まれる
共通の姓にすることで「家族」としての一体感が生まれることは確か。
また子供を望んでいる場合は、当然のことながら生まれてくる子供の姓も自分と同じものになります。一方で夫婦別姓の場合は、どちらかの親の苗字しか子供に付けられません。
メリット②:結婚したと実感できる
姓が変わるので、人によっては「結婚した」とより強く実感できます。
実際に私が夫の姓に変えた時も、「これから第2の人生がはじまるのか」と感慨深いものがありました。
私達の場合は同棲していて結婚しても生活自体はそれまでと変わりませんでしたが、同じ姓になった事でこれまでの「カップル」から「夫婦」になったとお互い実感できたのは良かったと思います。
デメリット①:パスポートやクレジットカードなどの名義変更が面倒
名義変更は本当に面倒。ざっと思いつくだけでも私は以下で新姓への変更手続きをしました。
- 銀行口座(ドイツ)x 2
- クレジットカード(ドイツ)
- 学生証(ドイツ)
- 健康保険(ドイツ)
- 納税者番号(ドイツ)
- 携帯(ドイツ)
- 銀行口座(日本)
- 定期預金(日本)
- クレジットカード(日本)x 3
手続きが多くて、全て終わるまでは「苗字を変えなければよかった」と何度か後悔しました。
ドイツの口座などは時間がある時に手続きすれば良いですが、日本の口座やクレジットカードの変更は一時帰国の限られた時間内で計画的に行わなくてはいけません。
また日本の滞在期間が短ければ、滞在中に新しい名義のカードが届かないこともあります。
旧姓のカードでも使用に支障はありませんでしたが、もやもやした不安の様なものがあってめんどくさかったです。
デメリット②:仕事やキャリアに支障の出る可能性がある
これまで仕事や研究などで実績を作ってきた人の場合、姓が変わるとそれを今後に繋げるのが難しくなる可能性があります。
これまで覚えてもらっていた名前が変わってしまう訳ですし、旧姓で書いた論文などもこれが自身のものだと何らかの形で証明しなければいけません。
人によっては仕事の時だけ「通称」として旧姓を使ったりもしますが、そもそも通称が認められていない会社ではこれが不可能。
また航空券の予約や緊急時の連絡で混乱したり、名前を間違えてしまったために余計な手間が増えてしまうこともあります。
デメリット③:日本で外国姓は目立つ
国際結婚後に日本で暮らすとなると、外国の姓はかなり目立ちます。
上の項で触れたように、親は会社などで「通称」を使える場合があるでしょう。しかし子供はそれができず、「ちょっと面白い苗字」みたいな理由で「いじめ」の標的になってしまう可能性も捨てきれません。
また姓を見ただけで国際結婚と分かってしまうので、人によっては周囲から色々聞かれて不快な思いをすることもあります。
お互いがこれまでの姓を保持する「夫婦別姓」
ドイツでは夫婦がこれまでの姓を保持する「夫婦別姓」も認められています。
【メリット】
- 名義変更などの手続きが不要
- 仕事や研究での実績が途切れない
【デメリット】
- 「夫婦」である事をいちいち証明しなければならない
- 子供と別の姓になる可能性がある
メリット①:名義変更の手続きが不要
姓がこれまでと変わらないので、銀行口座やクレジットカードなどの名義変更をする手間がありません。
これがないだけでも相当楽になると思います。
メリット②:仕事や研究での実績が途切れない
仕事や研究で積み上げてきた実績も、結婚後にそのまま繋げられます。
論文などは著者名で検索する事も多いので、本人にとっても検索する側にとっても姓が変わらないメリットは大きいです。
デメリット①:「夫婦」であることをいちいち証明しなければならない
夫婦それぞれが別の姓である場合、夫婦で一緒に何かの契約(銀行の家族口座など)をする時に2人が「夫婦」であると証明しなければいけません。
契約によっては口頭で「夫婦です」と言えば良かったりもしますが、きっちりした会社では婚姻証明書の提出が必要。
このほか緊急時に「夫婦であることの証明」に時間がかかり、その後の対応が遅れてしまうのではという心配もあります。
デメリット②:子供と別の姓になる可能性がある
夫婦別姓で子供が生まれると、子供には夫または妻どちらかの姓しか付けられません。
またドイツには、「子供の姓は全て同じであること」という決まりがあります。つまり1人目に夫の姓をつけたら、その後子供が何人生まれても全員が夫の姓を名乗らなければいけないのです。
なので仮に子供が夫の姓になった場合、家族の中で自分だけが異なる姓になってしまいます。そうなると何か寂しいですよね。
夫と自分の姓をつなげた「ダブルネーム」
ダブルネームは夫婦のどちらか一方のみが選択できます。
例えば夫の姓が「ミュラー」、妻の姓が「田中」だとして、妻がダブルネームにする場合は「田中・ミュラー(またはミュラー・田中)」といった姓に変わります。夫の姓はそのまま。
逆に夫がダブルネームにするカップルもいます。
【メリット】
- 自分の名前を残しつつ家族としての一体感もある
- 仕事などでの実績が途切れない
【デメリット】
- 長くてめんどくさい
- 航空券の購入で混乱する可能性
メリット①:自分の名前を残しつつ家族としての一体感もある
双方の名前をくっつけるので、自分の名前がしっかり残ります。
それでいて夫の名前も入っているので、家族としての一体感もありますし、子供が生まれた際に自分だけ全く異なる姓になることもありません。
メリット②:仕事などでの実績が途切れない
名前が残れば、これまで仕事や研究で築いてきた実績も途切れることはありません。
デメリット①長くてめんどくさい
1つの姓をつなげるので、人によってはものすごく長い名前になる場合があります。
「田中・ミュラー(Tanaka Müller)」くらいならまだいいですが、「東十条・ツィマーマン」さんはアルファベットで書くと「Higashijujo-Zimmermann」。
ドイツでは予約などの際に電話口で「スペルを教えてください」と言われる事が良くあるので、その都度「Higashijujo-Zimmermann」を1文字ずつ言うのはかなり骨が折れます。
私は旧姓の綴りが長めなので、これ以上長くなるのは嫌だと思ってダブルネームは選択から外しました。
デメリット②:航空券の購入で混乱する可能性
ダブルネームでのパスポートは、田中・ミュラー(Tanaka-Müller)さんだったら姓の表記が「Tanaka(Tanaka-Müller)」のようになります。
ここで気になるのが、国際線の航空券の購入時に姓をどのように書けばいいのかという問題。
例えばANAのサイトには「予約時の氏名入力はパスポート名と完全一致させてください」とありますが、その下には「( )が含まれている場合は( )部分を外した名前を外して記入してください」と書いてあります(参照)。
でもそれでは完全一致ではない気が…
それに括弧部分を省略して航空券を買ったとして、海外の出入国審査で表記が異なる理由を質問されたり、運が悪ければ出国・入国できなかったりと混乱が発生する可能性も無きにしも非ずです。
ドイツで夫の姓になっても手続きをしないと日本では「夫婦別姓」
ドイツで結婚して夫の姓にしても、日本側での手続きをしないと日本でのあなたの姓は旧姓のまま。
日本では夫婦別姓は認められていませんが、国際結婚ではなにもしないと自動的に夫婦別姓になるのです。
日本でも夫の姓にしたい場合は、婚姻後6ヵ月以内に「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出することで家庭裁判所の許可を得ずに日本での姓も夫のものに変更できます。
「氏の変更届」は領事館に婚姻届けを提出する際、一緒に申請するのが一番スムーズです。
「ドイツでは夫の姓、日本ではパスポートも含め旧姓」という人もいますが、混乱するのでどちらかに統一した方が良いと思います。
結婚後の名前 ドイツではどれが一般的?
2018年の少し古いデータですが、ドイツでは結婚後に夫の姓に変える女性が75%であるのに対し、妻の姓に変える男性は6%。
夫婦別姓が12%のほか、8%の夫婦で(夫婦のどちらかが)ダブルネームを選択しています。
- 妻が夫の姓に変える:75%
- 夫が妻の姓に変える:6%
- 夫婦別姓:12%
- ダブルネーム:8%
姓の選択については、結婚手続きで戸籍局(Standesamt)に書類を提出するときに「名前どうしますか?」という感じで聞かれます。
ドイツ語教会(GfdS)の調査によると、夫婦で同じ姓にたカップルは「将来子供が欲しい」または「既に子供がいる」というのが一つの大きな要因。
夫の姓が選択される理由については、「伝統的にそんな感じだしそれが普通」という考えや男性側のプライドも関係しているそうです。
それでも女性にだって名前に対するアイデンティティーやこれまで積み上げてきたキャリアがあり、いまの姓を残したいという人もいます。そんな場合には妥協案としてダブルネームを選択する事が多いとのこと。
ちなみに以前はドイツで結婚すると妻が夫の姓に変えなくてはいけませんでしたが、1976年の法改正で妻の姓の選択やダブルネームが認められるようになりました。
また夫婦別姓が選択できるようになったのは1993年からです。
私がドイツ人夫の姓を選んだ基準
私がドイツ人夫の姓を選んだ理由は以下の通り。
- 今後もドイツが生活の拠点になるので、ドイツ姓の方が生活しやすいと思った
- 将来子供がほしいので、そのときに家族全員が同じ名前が良いと思った
ほかにも「ダブルネームは長いから嫌」とか「響きがかっこいいから悪くないと思った」など細々した理由はいくつもありますが、一番重視したのは「今後ドイツで生活していく上での使いやすさ」でした。
実際に夫の姓にしてからは自己紹介しても「え?もう1回言って」なんて言われなくなりましたし、名前も以前より覚えてもらいやすくなった&間違えられなくなったのを実感しています。
私達にとって今後日本が生活拠点になる事はまずないので今回の選択になりましたが、もし日本に住む予定だったなら夫が私の姓に変えていたかもしれません。
ドイツで結婚するときの姓の選択:まとめ
ドイツで結婚する時の姓から、「夫婦共通の姓」、「夫婦別姓」、「ダブルネーム」という3つの選択肢について解説しました。
それぞれの特徴をおさらいすると次の通りです。
- 家族としての一体感が生まれる
- 結婚したと実感できる
- パスポートやクレジットカードなどの名義変更が面倒
- 仕事やキャリアに支障の出る可能性がある
- 日本で外国姓は目立つ
夫婦共通の姓
- 名義変更の手続きが不要
- 仕事や研究での実績が途切れない
- 「夫婦」であることをいちいち証明しなければならない
- 子供と別の姓になる可能性がある
夫婦別姓
- 自分の名前を残しつつ家族としての一体感もある
- 仕事などでの実績が途切れない
- 長くてめんどくさい
- 航空券の購入で混乱する可能性
ダブルネーム
私は夫の姓に変えて手続き関係で「キーッ!」となったものの、やっぱり変えて良かったと思っています。
古臭い考えかもしれませんが、同じ姓だと「家族になった」感が強くて嬉しいものです。
とはいえどの選択にしてもある程度の不便さは出てくるので、そこはもう割り切るしかないでしょう。
これから国際結婚をする予定で姓に迷っている人は、今回紹介した特徴を参考にパートナーとよく相談してみてください。