古城や可愛い街並み 小さな町に魅力がぎゅと詰まったメーアスブルク

ドイツ、スイス、オーストリアにまたがるボーデン湖。日本ではあまり知られていない場所ですが、ヨーロッパでは指折りのリゾート地として人気です。

中世の面影を残す町の数々や美しいアルプスの眺め、地元産の美味しいワインをはじめとする魅力もたくさん。私はこれまで何回も訪れていますが、来るたびに「また来たい」と思うほど大好きな場所でもあります。

今回はそんなボーデン湖から、メーアスブルクを紹介。小さいながらも古城やカラフルな家々といった魅力がぎゅっと詰まった、ロマンあふれる可愛い町です。

中世の趣が残るロマンティックな街並み

中世よりコンスタンツ司教の庇護を受けて発展したメーアスブルク。町の名が歴史上に登場するのは11世紀にまで遡ります。当初はお城が立つ高台周辺に、城壁で囲まれた小さな集落があるだけでした。

やがて町には1233年の市場権(市場を開く権利)ほか、1299年には都市権が与えられます。この頃になると人口も増えたことから、町は高台から湖畔のあたりまで拡大しました。

かつて小さな集落が築かれていた高台周辺は、「オーバーシュタット(Oberstadt)」と呼ばれ、2つのお城のほか博物館、カラフルな家々が集まっています。第二次大戦でも戦火を逃れた町では中世の面影が色濃く残り、その美しさはロマンチック街道の町々にも負けないほど。

オーバーシュタットで特に賑わいを見せるのが、マルクト広場周辺。どこを見ても美しい光景が目に飛び込んできて、この町が日本で無名だなんて信じられないくらいです。美しい出窓のある建物は、1250年創業の老舗ホテル・レストランの「Gasthof zum Bären」。鮮やかなオレンジ色の建物はワインレストランを併設している「Hotel Löwen」で、こちらも1534年創業という歴史があります。

熊亭の奥にみえるオレンジ色の塔は「上門(Obertor)」。かつて町をぐるりと囲んでいた城壁の一部です。

ライオン軒から右手に見える門をくぐって進んでいくと、情緒あふれる通りがいくつか伸びています。観光客でにぎわうマルクト広場とはうってかわって、ここまでくると人の姿もまばら。広場の喧騒がまるで嘘だったかのような、のんびりとした雰囲気が周囲を包み込んでいます。

中世の古城 メーアスブルク城

高台の上にはメースブルク城、次の章で紹介する新宮殿という2つのお城が立っています。

メーアスブルク城は7世紀に建設されたと伝えられる、ドイツ最古の城のひとつ。現在も個人の居城として使用されていて、住居エリア以外の部分が城博物館として公開されています。

13世紀にはコンスタンツ司教の所有となった城は、18世紀に新宮殿が建てられるまで歴代司教の居城として使われました。1414年から1418年にかけて開催されたコンスタンツ公会議の際は、当時の神聖ローマ皇帝シギスムントもここに滞在したと言われています。

異国からの騎士やミンネジンガーを迎え入れた部屋、城番が待機していた部屋、武術の稽古が行われた部屋などがあり、中世の雰囲気たっぷり。場所によってはゴシックやバロック様式のエッセンスも散りばめられています。

城番が待機していた部屋は一番古い部屋のひとつで、壁の厚さはなんと3mもあるのだそう。

19世紀に活躍したドイツの女流詩人、アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフが晩年を過ごした場所としても知られているメーアスブルク城。城の中には彼女が使っていた部屋も残されいて、ここだけ他の部屋とは異なる繊細な雰囲気に満ち溢れています。

華やかな新宮殿

新宮殿は当時のコンスタンツ司教ヨハン・フランツ・シェンク・フォン・シュタウフェンベルクの命により、1710年に建設が始まったお城。1750年に司教の居城となってからも、歴代の所有者によって拡張が繰り返され、現在の姿になりました。

鮮やかなピンク色の外観は、まるで司教の権力を知らしめるかのような強烈ないでたち。写真のボーデン湖に面した側にはバロック様式のファサード、反対の広場に面した部分ではロココ調のファサードが取り付けられています。

入り口から「祝賀の間」へと続くエレガントな吹き抜けは、バルタザール・ノイマンという建築家によって設計されたもの。彼は世界遺産に登録されているヴュルツブルクのレジデンツや、南西ドイツのブルッサール城をはじめとする数々の建物を手掛けた、「ドイツ・バロックの巨匠」ともいえる人物です。

吹き抜けの階段を上っていくと、優美な雰囲気の「祝賀の間」にたどり着きます。数々の客人を迎え入れたほか、祝賀行事なども執り行われた、まさに城の「顔」とも言える部屋。天井一面に描かれたフレスコ画にも注目です。

祝賀の間から左右両方向には、司教が住んでいた部屋や客人用として使用されていた部屋が並びます。壁いっぱいのタペストリーや家具調度品、美しいシャンデリアなどからは、当時ここで営まれていた優雅な暮らしぶりがよく分かります。

まさに贅をつくした豪華な新宮殿ですが、司教の住居として使われていたのは1802年にメーアスブルクが世俗化されるまでのわずか50年ほど。世俗化で司教が権力を失うと城はバーデン選帝侯の手に渡り、その後20世紀半ばまで研究所や学校の建物としても使用されました。

ツェッペリン博物館

お城から湖畔へ降りる階段の途中には、ツェッペリン博物館がひっそりと構えています。

ツェッペリンはフェルディナント・フォン・ツェッペリン(ツェッペリン伯爵)手によって開発され、20世紀初頭に活躍した硬式飛行船。旅客用としてはるか遠くの日本や南アメリカを周遊したほか、第一次大戦中には偵察や長距離爆撃にも投入されました。

空への夢を諦めきれず、軍退役後は飛行船開発に着手したツェッペリン伯爵。彼の計画は専門家たちから大反対を受け、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世には「南ドイツで一番の馬鹿」と言われたのだとか。数々の苦労や資金難に悩みながらも、1900年には念願の飛行船第一号が完成。ツェッペリン伯爵の夢を乗せた飛行船は、ボーデン湖の上で18分間にわたる初飛行を成しとげたのでした。

メーアスブルクのツェッペリン博物館は、小さいですが見ごたえたっぷり。資料や機内で使用されていた食器類、宣伝用チラシなどが展示され、当時人々に夢と希望を与えたツェッペリンの歴史が鮮やかによみがえります。

展示されている品はレプリカなどではなく、すべて実際に使用されていた物というのが博物館の自慢です。

ちなみにメーアスブルクからボーデン湖沿いを車で30分走ると、かつてツェッペリンの製造工場があったフリードリヒスハーフェンという町があります。ここには大規模なツェッペリン博物館があり、実際の客室なども再現されていて面白いです。またちょっと高いですが、町の郊外から飛行船でボーデン湖のうえを遊覧飛行できます。

言わずと知れたワインの産地

メーアスブルクはワインの産地としても有名。ボーデン湖に面した斜面にはワイン畑が広がり、町には地元産ワインを味わえるワインレストランも沢山あります。

その中の1つが、高台へと続く坂道の途中にある「Meersburger Winzerstuben」。

テラス席からの眺めがとても良く、ワイングラスを傾けながらリゾート気分を味わうにはぴったりのレストランです。

料理はケーゼシュペッツェレをはじめとする南ドイツの郷土料理のほか、ボーデン湖で獲れた魚料理もおすすめ。フラムクーヘンなどワインのおつまみ的料理も揃っています。

美味しいワインをお土産に持って帰りたいという方は、町の至るところにあるワイン屋さんや、丘の上にある州立ワイン醸造場でお気に入りを見つけてみましょう。メーアスブルクで生産されているのは、ドイツの他の地域とおなじく白ワインが主。「ミュラー・トゥルガウ」、「ケルナー」、「ジルバーナー」といった品種が多いです。

お城とボーデン湖の眺めが素晴らしい絶景スポット

旧市街の北はずれにあるカトリック教会(Katholische Kirche)の裏手から、坂を少し下ると絶景ポイントがあります。

ボーデン湖を背景に中世の雰囲気をたたえるメーアスブルク城がそびえ、その様子はまるで絵葉書のよう。こんなに美しい絶景が楽しめるのに、ここまでやってくる観光客はごくわずかしかいません。

まさに隠れ家のような素敵な場所なので、皆さんもぜひ足を運んでみてください。

メーアスブルクへのアクセス

メーアスブルクへは鉄道が通っていません。町へはバスか自動車、またはボーデン湖湖畔の町からフェリーでアクセスします。

長距離/近郊バス

長距離バスは格安バス会社の「Flixbus」がメーアスブルクと各地を結んでいます。

各都市からの所要時間の目安は以下の通りです。

  • ミュンヘン:乗り換えなしで3時間
  • フライブルク:乗り換えなしで2時間~2時間半
  • ウルム:乗り換えなしで2時間半
  • チューリヒ:乗り換えなしで2時間

またボーデン湖周辺を周遊するバスを利用して、近郊の町からアクセスすることも可能です。メーアスブルクの東にあるフリードリヒスハーフェンからは「Stadtbahnhof」から出ている7395番のバスに乗り、「Meersburg Kirche」という停留所で降りてください。所要時間は30分です。

さらに東のリンダウやブレゲンツから向かう場合も、まずフリードリヒスハーフェンまで電車で向かい、そこでバスに乗り換えます。

自動車

自動車でメーアスブルクに向かう場合、車は旧市街の外側に泊めることになります。

利用しやすいのは、町の西側にあるウンターウールディンガー通り(Unteruhldinger Straße)の駐車場。フェリー乗り場の目の前にあり、門をくぐればすぐ町の目抜き通りに出ます。

シュテファン・ロッホナー通り(Stafen-Lochner-Straße)には屋内駐車場があります。こちらは高台の上にあり、マルクト広場やお城へのアクセスが抜群です。

フェリー

対岸にあるコンスタンツほか、フリードリヒスハーゲンやリンダウなど湖畔の町からフェリーでのアクセスもできます。私は以前にコンスタンツからフェリーを利用しましたが、船からの眺めも良くてかなり気に入りました。遠くで湖上を進んでいくヨットなど見ながら、ちょっとしたクルーズ気分が楽しめます。

フェリーはBSBという会社が運行しています。各地からメーアスブルクへの所要時間は以下の通りです。

  • コンスタンツ:30分
  • マイナウ島:20分
  • リンダウ:2時間半
  • フリードリヒスハーフェン:1時間

またフェリー乗船チケットとメーアスブルク城、マイナウ島などの入場券がセットになった、お得なチケットもあります。

時刻表や料金はBSBのウェブサイトを参考にしてください。

メーアスブルクでおすすめのホテル

ホテルは湖畔エリアの目抜き通り沿いと、マルクト広場周辺に集中しています。人気観光地なので、特に夏は早めの予約が必須です。

湖畔エリアで特に評価が良いホテル「Hotel & Gästehaus Seehof」は、シックな部屋と種類豊富な朝食が人気。湖に面したプロムナーデ沿いに立ち、フェリーが出航する港もすぐ近くにあります。

高台のマルクト広場周辺では、老舗ホテルの「Hotel 3 Stuben」や「Hotel Löwen Weinstube」がおすすめ。どちらもクラシカルな内装の広々とした部屋が自慢で、休暇を過ごすのにはぴったり。2つあるお城へも徒歩2分以内という立地の良さです。

ホテル代を抑えたいという時にぴったりなのが、マルクト広場に面した塔の外側にある「Hotel Victoria」です。家族経営の小さなホテルで、メーアスブルクにあるホテルの中ではコスパがかなり良し。天気のいい日にテラス席で食べる朝食も好評です。

紹介した場所の地図&まとめ

今回紹介したスポットを上の地図にまとめました。青が見どころ、緑がホテル・レストラン、オレンジは駐車用やバス停になっています。

メーアスブルクは見どころが沢山ある一方、町がコンパクトにまとまっているので観光もしやすいです。

ただ坂道が多いので、「まずは高台の上から攻めて、その後は下町へ」という風に計画的に町を回るようにしましょう。坂の上り下りが多いと、結構辛いです。

ロマンチックな旧市街の散策を楽しんだり、美味しいワインに舌鼓を打ったりと、じっくり時間をかけてこの町の魅力を感じてみてください。

ボーデン湖周辺のおすすめスポットについては、「ドイツ人に大人気のリゾート地 ボーデン湖の見どころ5選」でも紹介しています。

 

 

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