【ドイツ世界遺産】ローマ帝国の国境線(リメス)にあるザールブルク城砦

先日ドイツの世界遺産に「ヘーゼビューとダーネヴィアケの考古学的景観」と「ナウムブルク大聖堂」が新たに加わりました。

これでドイツの世界遺産は44ヶ所(2018年7月現在)。そんなにあったのか!?と驚く方も多いかもしれませんが、意外にもドイツは世界遺産大国なのです。

そんなドイツの世界遺産のひとつが、「ローマ帝国の国境線」。ゲルマン人の侵入を防ぐために壁と堀で築かれた国境線で、総延長は550kmに達します。

今回はその国境線の一部であった、フランクフルト近郊のザールブルク城砦を紹介。国境線や通商路を監視するために建てられた大規模な駐屯地の跡地が、考古学博物館として公開されています。

ローマ帝国の国境線「リメス」

2世紀にローマ皇帝ハドリアヌスが造らせた国境線。ドイツでは「リメス(Limes)」と呼ばれ、かつてライン川から支流のマイン川を経て、ドナウ川流域にかけて総延長550kmの国境が続いていました。

ゲルマン民族の侵入を防ぐため、土塁の壁と堀(幅約8メートル、深さ約2.5m)で築かれた国境。国境に沿って監視のための物見櫓や砦も作られました。

なかには大規模な駐屯地のような砦もあり、今回紹介するザールブルク城砦もそのひとつ。

ザールブルク城砦の発展と衰退

ザールブルク城砦は国境や通商路を守るローマ人兵士とその家族が住んでいた集落の様なもので、現在はその跡地が博物館として公開されています。

建設は2世紀はじめごろ。築かれた当初は約160人が駐屯し、重要な通商路の警備をしていました。135年には砦が拡張され、兵士も600人に増員。兵士のほかにも、その家族や商人、手工業者が住むようになります。

そして200年ごろには住民の数も2000人まで拡大。小さな駐屯地から大規模な集落へと変貌を遂げます。インフラも整えられ、舗装された道路のほか商店や浴場、宿屋なんかもありました。

ところが233年にゲルマン人の攻撃を受け、集落は焼け落ちてしまいます。兵士や住民は逃げ出すことができましたが、財産などは敵の手に…

その後3世紀中ごろはゲルマン人が国境周辺をたびたび襲うようになり、国境としての機能はもはや無いも同然。ザールブルクにいた兵士も引き上げてしまい、やがて住む者は誰も居なくなってしまうのです。

ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の命で再建

荒れ果て、忘れ去られていたザールブルク城砦ですが、19世紀はじめに採掘調査が始まります。19世紀後半にかけて砦跡地や周辺地域が調査され、当時の武器やお金なども出土しました。

1897年にはドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が再建を命じ、1907年に無事完了。再建には皇帝の援助のほか、国内外から多くの寄付が集まりました。

そして2005年にはローマ国境線が世界遺産に登録された事をうけ、その一部であるザールブルク砦も世界遺産の仲間入りを果たしたのです。

壁に囲まれた砦の跡地

ザールブルク砦では集落のまわりが壁でぐるりと囲まれ、建物の基礎部分が各所に残されています。入り口で訪問者を迎えるのは、ローマの将軍アントニウスの像。国境を警備していた場所なので、「下がれ!」と言っているのかも。

説明はあったりなかったりなので、色々詳しく知りたければガイドツアーに参加するのがおすすめ。

パンを焼いていたオーブン。乾燥させた薪を中で燃やして予熱をし、釜が十分に熱せられたら灰をかき出してそこへ生地をいれてパンを焼いていました。

ここに住んでいたローマ兵士はかなりグルメだったようで、南方からのワインをはじめ北部の海でとれた牡蠣やアフリカからのナツメヤシなども食卓にのぼったそうです。

ところで集落を囲んでいる壁ですが、ローマ時代は写真の様な白い壁でした。現在の様な見た目は再建のときから。これはヴィルヘルム2世の好みだったのかも。でも確かに、真っ白な壁よりは今の方が趣はありますね。

壁の外には浴場の跡地があります。ローマ人はお風呂好き。ドイツでは、ほかにもトリーアという町にローマ時代の浴場跡があります。

出土品の展示

展示品されている武器や装飾品、壺やお金などからは、当時の生活の様子が何となくですが想像できます。

顔が描かれている壺は、何らかの宗教儀式につかわれたのでしょうか。

ブルーが美しい花瓶。この様な装飾品などを見ても、当時の生活水準がとても高かったのだと想像できますね。

兵士が使用したマントの留め具もこんなに沢山の種類がありました。オシャレをしたい気持ちは昔も今も変わらず。どれも細部まで凝ったデザインです。

ザールブルクでは木製品や革製品も多く出土しています。どれもとてもいい状態で発掘されましたが、それには地下から湧き出る水によって土がほどよく湿っていたことが大きく関係しているのだそう。

湿りすぎていても逆に腐ってしまうので、よほど地中水分量のバランスが良かったのでしょうね。ちなみに井戸の跡地は敷地内のあちこちに残されています。

カフェ

壁に囲まれた集落内には、古代風のカフェ「Taberma」があります。ローマ時代の食べ物を再現したメニューもあるので、ローマ時代の食卓に興味があればぜひチャレンジを。

写真の「ローマ風プレート」では、ハーブや穀物入りのソーセージやハーブ入りクリームチーズなどが盛り合わせになっています。

そのほかは一般的なサラダ類やソーセージ、ケーキ類が用意されています。

ザールブルク城砦の基本情報

ザールブルク城砦の基本情報は以下の通り

名称 ザールブルク城砦(Römerkastell Saalburg)
住所 Am Römerkastell 1, 61350 Bad Homburg
開館時間 9:00~18:00(3月~10月)、9:00~16:00(11月~2月、月曜休み)
休館日 12/24、12/31
料金 7€

 

カフェ「Taberna」の営業時間

3月~10月 10:00~18:00
11月、12月、2月 12:00~16:00(月曜休み)
休業 1月、12/24、12/31

 

ザールブルク城砦へのアクセス

ザールブルク城砦を訪問する場合、拠点となるのはフランクフルトです。

フランクフルトからS-Bahnの5番でバート・ホンブルク(Bad Homburg)まで行き、そこからバス5番でザールブルク(Saalburg)まで。所要時間は約1時間。

おわりに

今回紹介したザールブルク城砦は世界遺産ではありますが、ケルン大聖堂やヴィース教会などと比べればかなりマイナーな場所です。

なので「あまり日本人が知らないようなマイナーな場所にいきたい」なんて人にはぴったり。もちろん歴史や考古学が好きな人にとっては、かなり興味深い場所であることは間違いありません。

フランクフルトからもアクセスしやすいので、フランクフルトで滞在予定の方はぜひ訪問を検討してみてください。

行かれる際には、ローマ人の食事を味わうのもお忘れなく!

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