テネリフェ島の美しき古都オロタバと巡礼地カンデラリア

テネリフェ島旅行記から、今回は島の中ほどにある2つの町ラ・オロタバ(La Orotava)カンデラリア(Candelaria)を紹介します。

オロタバはカナリア様式の建物が連なり、情緒あふれる古都と呼ぶにふさわしい町。旧市街の美しさで言えば、今回テネリフェ島で訪れた町のなかで1番といってもいいほど。

カンデラリアは海岸沿いの小ぢんまりとした町で、ここにあるバジリカはキリスト教における重要な巡礼地のひとつでもあります。小さいながらも目抜き通りにはお土産屋さんやカフェなどが並び、そぞろ歩きが楽しい場所です。

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古都オロタバとはどんな町?

オロタバは、テイデの北に広がるオロタバ渓谷内にある町。その肥沃な土地から16世紀から17世紀中ごろまではサトウキビ栽培、その後はワイン生産が盛んに行われてきました。18世紀にはスペイン、イギリス間の戦争に巻き込まれ一時衰退するものの、20世紀にはバナナ栽培と観光産業で再び持ち直し、現在に至ります。

カナリア様式の建物が並ぶほか、かつての宮殿や教会も点在している街並みは歴史情緒たっぷり。旧市街の中に足を進めるにつれ目に映る建物が現代的な物から古いものへと変わっていき、過去へタイムスリップをしているかのようでした。

旅情誘うオロタバの街並み

私達は旧市街から少し外れた場所に車を駐車して街の散策をしました。中心部にも駐車場はありますが、一方通行の道が多いので要注意。初めての場所で土地勘も無い場合は、迷路のような町の中を彷徨うはめになるかもしれません。

旧市街の北側から中心に向かって歩いていくと、立派な宮殿のような「Loco de Taoro」が見えてきます。建物は20世紀になってから建てられたもの。現在は文化機関が入っていますが、かつては学校としても使用されていた時期があったそうです。整備された庭が宮殿の雰囲気にとても合っていました。

宮殿のまえは比較的大きな広場になっています。南国っぽい植物があちこちにあるほか、小さなカフェのテーブルも並んでいたりして、まさに町の人の憩いの場という感じ。奥に見えるのはサン・アウグスティン教会で、隣には音楽学校も入っています。

広場の東側にはテラスになっていて町を一望できます。写真に写っている細い道を入っていくと、いよいよ趣のある街並みが見えてきますよ。

テネリフェ島はスペイン領ではあるものの、地図上ではほぼアフリカともいえる場所にあります。なので古い街並みはアフリカ(行ったことないけど)のような、イスラム圏のようなエッセンスが混ざっているエキゾチックなところが多いです。

この宮殿のような建物は大学のキャンパス。

ちょっとひなびた様な街並みにもどこか旅情を誘うものがありますね。

パステルカラーの壁にそれぞれ木製の窓枠が付けられていて統一感のある街並み。そんなに急という訳ではないですが坂道が多いので、歩いていると結構疲れます。あとは狭い道でもスピードを出してくる車に注意。

ゼラニウムで飾られたカナリア様式のベランダ

カナリア様式の建物がならぶオロタバの旧市街。木製バルコニーには必ずと言っていいほど赤いゼラニウムが飾られていて、鮮やかな赤が彩を添えています。

中でも一番有名な建物が、カサ・デ・ロス・バルコネス(Casa de los Balcones)。訳は「バルコニーの家」となり、見た目そのままの名前です。17世紀に建てられたもので、中にはショップや郷土博物館が入っています。立派なバルコニーが見える中庭も必見。

カサ・デ・ロス・バルコネスからコレヒオ通りを北上した所にあるカサ・レカロ(Casa Lercaro)。こちらの建物もなかなか可愛らしいバルコニーがありました。

建物内にはお店が入っていて、中庭の一部はレストランにもなっています。こんな風に緑の茂った中庭って素敵。日差しが強いテネリフェ島では、日中ずっと太陽が照る庭よりもこんな風にほどよく影のある庭の方が使い勝手も良さそうですね。

屋根の形がおもしろい教会

オロタバの旧市街には教会が点在していますが、面白いのはその塔の上にある屋根の形。どれもキスチョコみたいな形をしていました。ほかの町の教会ではあまりこの様な形を見かけなかったので(気づかなかっただけかも)、この形は町の文化や歴史と関係があるのかも。

白黒のキスチョコが上に乗っているのはコンセプシオン教会。その歴史は15世紀まで遡り、建物は18世紀にグイマルの火山噴火で大破損を受けた後に再建されたもの。

正面からは見えませんが、教会のドームもカラフルでまた面白いんです。アラビアンナイトの1場面に出てきそうな雰囲気。

教会の内部では、ドームの内側が神秘的な紫の光であふれていました。両側の壁にはキリストや聖母マリアをモチーフにしたステンドグラスが並んでいます。

正面に飾られている祭壇では「神の仔羊」のレリーフがとても神々しく、背筋がゾクゾクっとするほど。何だか側にいるだけで見えないパワーをもらえた様な感覚でした。

巡礼地カンデラリア

サンタ・クルスから車で20分ほど南下した場所にあるカンデラリア(Candelaria)。ここにあるバジリカはカナリア諸島の守護聖人である「カンデラリアの聖母」を祀っていることから、キリスト教における重要な巡礼地となっています。

バジリカのある場所には17世紀に築かれた教会がありましたが、18世紀後半に発生した火災で焼失。現在のバジリカは1950年代に建設されました。この日は良く晴れていて、青い空に白い壁がよく映えた姿が美しかったです。

建築様式は、ルネサンス様式とバロック様式を融合させながら発展を遂げたこの地独自のもの。壁や柱の装飾はどちらかというと質素なほうで、そのぶん正面に描かれた壁画や壁のステンドグラスの美しさが際立っていました。

正面の壁中央に安置されている聖母像。周囲には聖母を守る天使や農民のほか、下の方には宣教師、そして上部にはキリストが描かれています。ちなみに、ここに祀られている聖母像はいわゆるレプリカ。本物は1826年の嵐で大量の水がバジリカ内部に押し寄せた際、海に流されてしまったのだそう。

バジリカのすぐ近くには、岩に組み込むようにして立つ小さなチャペルがあります。写真では暗くて分かりにくいですが、左の洞穴にはそのむかし聖母像が安置されていた神聖な場所なのだそう。

チャペルの中は岩がそのまま張り出していて迫力がありました。その岩のせいか、なんだか目に見えないパワーみたいなのを感じて、奥に入るのが何となく躊躇われるほど。奥には聖母のブロンズ像が置かれています。

海岸沿いに並んでいる像は、カナリア諸島の先住民であるグアンチェ族の王たち。

町の目抜き通りにはお店やカフェが並びます。ここにあるスパイス店でサボテンの実のジャムを買ったのですが、翌日の朝食に食べてとても美味しかったので後日またここまで買いに来ちゃいました。

カンデラリアからサンタ・クルス方面へ帰る途中には、絶景スポットも見つけました。高速道路ではなく山沿いの坂道みたいになっているTF-28を北上していくと、写真のような景色が見えてきます。あまりにも綺麗だったので路肩に車を停めてしばし海岸線の眺めを楽しんだのでした。

おわりに

今回紹介した2つの町はサンタ・クルスや南部のリゾート地ほど人も多くありません。それぞれの町が辿ってきた歴史を感じながら、趣ある町並みをのんびり散策してみてはいかがでしょうか。

特にオロタバのエキゾチックな町並みは素敵なので、テネリフェ島での滞在が短い場合でもここだけは訪れたいところ。

観光所要時間はオロタバは半日、カンデラリアは2~3時間あれば十分。2つの町を1日で回ることも可能ですし、それぞれ近くにあるロロパークやラ・ラグーナといった町と組み合わせても良いでしょう。